貿易収支が黒字になるほど円高の圧力は強まる

日本の輸出企業が外貨を稼ぐことが円高要因につながる

日本の輸出企業が外貨を稼ぐことが円高要因につながる

まだ円が固定相場制だった頃の為替レートは、1ドル=360円。それが長年にわたって円高になった理由のひとつは、戦後の高度経済成長の中で日本が輸出大国となり、貿易黒字を大幅に積み上げてきたからです。

貿易収支が黒字になるのは、輸入に比べて輸出が多いからです。

日本が海外諸国との間で貿易取引を行う場合は、基本的に米ドル建てになります。たとえば日本の自動車メーカーが海外に自動車を輸出した場合、その代金は円で受け取るのではなく、米ドルを中心とした外貨で受け取ることになります。

したがって、輸出額が輸入額を上回れば上回るほど、日本の輸出企業は多額の外貨を保有していることになります。

しかし、どれだけ外貨を稼いだとしても、日本の輸出企業による下請け企業への支払いや従業員への給与支払いは、円建てで行われます。その際、輸出によって稼いだ外貨を円に変えなければなりません。これは、外国為替市場で円買いの要因になります。つまり、貿易収支の黒字額が増えれば増えるほど、円高の圧力が強まっていくのです。

米国の対日貿易収支の赤字拡大も円高要因に

加えて、米国の貿易収支も注目材料になります。

オバマ大統領は、リーマンショックから米国経済を立て直すため、輸出を促進する政策を打ち出していますが、基本的に米国の貿易収支は慢性的な赤字が続いています。

この状況を、米国側は「貿易不均衡」と捉えています。米国は原則として貿易を自由化しており、海外からどんどんモノを買っているのに、諸外国は規制をかけて米国からモノを買わないようにしているという発想です。したがって米国は、貿易収支の赤字が膨らむと、諸外国にさまざまな圧力をかけてきます。かつての日本、そして今の中国が、特にそのターゲットとなっています。

米国は、規制緩和をしないのであれば、為替をドル安にすることで、海外製品の米国内における価格競争力を削減しようとします。つまり日米関係でいえば、日本の貿易収支の黒字拡大と、米国の対日貿易収支の赤字拡大は、円高に直結するのです。

2012年の貿易収支は32年ぶりの大幅赤字

ところで、現在の日本の貿易収支がどうなっているのかというと、2012年の年間を通じての貿易収支は、32年ぶりという過去最大の赤字になりました。その額、6兆9273億円の赤字ですが、過去の最高額は、第2次オイルショック後の1980年に記録した2兆6139億円ですから、まさに過去最大の大幅赤字になったのです。

理由は、原子力発電所の稼働停止によって、液化天然ガスなど海外からのエネルギー輸入が大幅に増える一方、欧州債務危機で日本から海外への輸出が大幅に減少したからです。

いずれにしても、輸入額が増えるほど、外国為替市場では海外からモノを輸入するのに必要な外貨の調達が必要になりますから、為替市場では必然的に外貨の買いが多くなり、円安が進みやすくなります。

昨今の円安は、アベノミクスが要因などともいわれますが、一方で貿易収支が大幅赤字に転落したという構造的な問題もあるのです。

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