政府は、すでに解禁されている副作用リスクの低い第3類(ビタミン剤など)に次いで、リスクの高い第1類(発毛剤など)や第2類(解熱剤など)の薬も対象に加える方針を示しています。
ネット販売の他にも、一定の条件を満たしたコンビニエンスストアでは、2009年から消化薬や整腸薬などが買えるようになりました。コンビニの利便性を生かした取り組みです。
このように、ネットやコンビニで薬を簡単に手に入れられる時代になってきたのに、ED(勃起障害、勃起不全)治療薬はコンビニで買うことができません。
性行為の必需品であるコンドームを置いているコンビニでED治療薬を買えないのはなぜでしょうか。
根深い、偽造品の横行による健康被害
ED治療薬を入手するには「病院やクリニックなどで医師の診察を受けて処方してもらう」という手続きを踏まなければなりません。結論的にいえば、コンビニで買えない理由はこの一点に尽きます。コンビニは医療機関ではありませんし、処方せんを書いたりすることのできる医師もいないので扱うことができないのです。院内で薬を渡さないシステムの医療施設では書いてもらった処方せんを持って薬局を訪ねなければなりません。しかし、ED治療薬の在庫を切らしているところが少なくないため、複数の薬局を回らざるを得なかったという患者さんもいます。
入手に至るまでの手続きの煩わしさや、医療保険がきかないことによる正規品の割高感から、非正規品つまり偽造のED治療薬に手を出す人は後を絶ちません。実は、コンビニで買えないことよりも、こうした偽造品の横行で健康被害を受ける人が増えることのほうが問題が根深いのです。
正規ルート上回る、非正規ルート利用者
ネット購入をはじめとする非正規ルートで入手する利用者が多い
不正規ルートからの入手は4%で、その内訳は
- ネット購入=2.6%
- 友人・知人から入手=0.6%
- その他=0.6%
つまり、正規ルート(2.8%)よりも、非正規ルートからの入手がはるかに上回っている実態が浮き彫りになりました。
この調査では「医師以外から入手する理由」(複数回答)については、
- 手軽だから=81.3%
- 安く入手できるから=46.4%
- 病院に行くのは恥ずかしい、周囲に知られたくないから=39.2%
- 忙しくて時間がないから=17.1%
- ED治療を行う医療機関がわからない=6.4%
- その他=1.1%
圧倒的多数の「手軽だから」という回答はネット購入が減らない最大の理由と考えられます。
製造環境や含有成分で健康を損ねることも
ネット購入の怖さは不衛生で劣悪な製造環境や、含まれる成分の種類や量による健康被害を招くことにあります。例えば海外において、10年6月に、ベトナムで購入した偽造品を服用して1時間後に多量の発汗やろれつの乱れ、運動失調、錯乱などで病院に搬送された54歳の男性が重い低血糖を起こした例が報告されています。分析の結果、この偽造品には大量の血糖降下剤が含まれていたことが分かりました。
国内でも、11年4月に、奈良県薬務課から「ED治療薬の偽造品を服用した男性が意識障害を起こし、病院に搬送される」という事例や、偽造ED治療薬服用との因果関係は明らかではないものの「呼吸困難などで病院に搬送され死亡に至った男性の衣服から偽造ED治療薬が見つかる」事例が報告されました。
安心感、信頼性で支持される正規品
「安心感」や「信頼性」を得る早道は医師に処方してもらうこと
- 医師の診察を受けたほうが安心だから=71.8%
- 偽物ではなく、信頼できるから=59.6%
- その場ですぐに手に入るから=39.6%
- EDの専門病院、医院で相談しやすいから=27.5%
- 他の病気の通院のついでに処方してもらっているから=22.5%
- その他=1.1%
上位2つの回答が過半数を超えていることから、入手に伴う煩わしさや恥ずかしさからネット購入に頼る患者さんがいる半面、「安心感」や「信頼性」を得るために医師に処方してもらうことを選ぶ患者さんが多いことが分かります。
医師の診察や処方を受けた患者さんが健康被害に遭う恐れはほとんどないはずです。くれぐれも買いやすさや価格の安さに心を奪われ、大切な健康を損ねることのないように注意しましょう。
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