シンプルな魅力を、感じていたかったのに……
思い返せば、初代パンダは随分と思い切った商品企画で、“とにかく誰でも買えるような安物にしろ!”という割り切りが逆にユニークな存在感を与えたものだった。フィアット&ジウジアーロにとっては、窮余の一策だったかもしれない。けれども、それは瓢箪から駒だったことは確かである。
パンダと聞くと、そんな初代のイメージがずっと強く残っていて、本当はパンダと名乗るつもりのなかった先代モデル(ジンゴパンダ)も、パンダとして親しむには少しけれんみが過ぎたように思えたものだった。
けれども、旧型パンダの走りそのものは快活で、足腰もしっかりと動いており、“ちょっとだけSUV風味”のコンパクトカーがまだ目新しかった(2003年当時)せいもあって、プリミティブ+αな存在として、日本では個性的なイタリアの実用車、というポジションはしっかり守られていたと思う。端的に言って、(最後までパンダとしては納得していなかったけれども)好きなモデルだった。
さて。この3代目は、どうだろうか……。
まずは“イージー”の1グレードのみが正規輸入されることとなったが、車両価格は208万円。旧型の100HPや4WDといった“高性能”で“重装備”なモデルでも207万円で、モデル末期には全グレードが200万円を切っていたことを考えれば、ちょっとタカイナァ、が正直な印象だ。
パンダはあくまでも、“100万円台で買える新車のイタ車”であって欲しい。それでこそパンダであり、ちょっと高級になったから高いというのは、豪華なインスタントラーメンのようで納得がいかない。
この3代目、わずかにサイズも大きくなり、妙に凝ったディテールがあたえられたスタイリングやインテリアなどを見るにつけ、見栄え質感が随分と上がったぶん高くなったのか、と、なんだか“余計なお世話”をいただいた気分になってしまう。もっとすっきりとしたシンプルな魅力を、感じていたかったのに……。
初代パンダからモチーフを得たというインテリアにしても、ちょっと凝り過ぎじゃないか……。外観と同様に、角を丸めたスクエア形状を基本としているわけだけれども、どうにも長持ちするデザインには思えない。かわいい、とは思えたとしても、だ。
室内スペースは、ボディサイズが大きくなったのだから、当然、広まった。工夫でもなんでもないので、これも×。ラゲッジ容量も同様。リアシートは6:4の分割可倒式で、後席を倒せば最大870リッターの積載能力を得る。
パワートレインは、フィアット500やクライスラーイプシロンで既に定評のある、900cc2気筒インタークーラー付きターボ“ツインエア”+デュアロジック5速セミオートマチックである。