株高で、企業年金の運用不安は一掃されるのか
日本株が大きく上がりました。日経平均株価で8000円割れしていた時期から比較すれば、執筆時点では少し下がっているものの、1万4000円台は大きな株高です。直近の最高値は1万5706円ですが、昨年の最安値と比較すればあっという間に8割以上値上がりしたことになります。これだけ株高になると、「運用不安」というものはなくなりそうな気がします。たとえば公的年金の運用不安が将来の給付を脅かすのではないかと言われた時期もありましたし、企業年金の運用難がその会社の株価を下げたり、給付カットにつながる懸念もありました。こうした心配とはさよならできそうな気がします。なにせ80%アップですから。
ところが、年金運用の利回りは2012年度ベースで、11.1%と見込まれています(引用:タワーズワトソンのサーベイはこちらから)。
11%の利回りも低金利の銀行預金と比べればすごいのですが、なぜ80%の利回りにならないのでしょうか。そこには、企業年金が運用において、普通の人の運用とは違ったポイントを重視しているからです。
日本株が80%値上がりしても、11%の運用成績なのはなぜか
個人の運用であれば、「今一番値上がりするものをとにかく買おう」と考えます。しかし、企業年金や公的年金運用ではそうしません。なぜなら、「集中して投資をすると、下がったとき反動も大きい」ということを考えるからです。個人の運用なら、株価が下がったとき、「いやー、失敗したなあ」で個人が反省すればすみます。しかし、企業年金や公的年金の場合、「会社に失敗した責任を負ってください。○○億円です」とか、「将来の年金給付に不足が出るかもしれません」となってしまいます。個人の相場観で運用されて失敗だけ押しつけられても困ります。
大きな失敗が許されるのは、株式市場の平均そのものが下がった場合であり、この場合でも、なぜ株式をその割合(あるいは金額)保有していたのかが厳しく問われなければなりません。そのため、企業年金では、複数の投資対象を同時に保有するのが基本戦略となっています。
具体的には、日本の株式、外国の株式(先進国だけにするか新興国も持つか)、国内の債券(国債だけにするか、社債も持つか)、外国の債券、不動産投資、コモディティなどなど、いろんなものに投資を行っています。これらは同時に値上がりすることはまずなく、むしろ勝ったり負けたりするのが一般的です。
同時にこうした投資先を組み合わせて持つことで、「大きく負ける」を回避し、堅実に勝とうと考えると、「日本株だけに全力投資!」のような戦略は取れないことになってしまうわけです。
一般的な企業年金だと、日本の株式に全体の20%くらいしか投資していません。つまり、国内の株価が80%上がろうとも、16%分しかプラスにならないわけです。また、企業年金は基本的に3月末が決算で、昨年3月末と比較すると約24%のプラスですから、これまた4.8%分しか運用成績に反映されないというわけです。
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