30年前は屋外飼育の犬は5歳から6歳で死ぬことが多く、その死亡原因の最多はフィラリア症でした。ありがたいことにフィラリア予防の普及で、犬の寿命が延びています。最近は基礎疾患がなければ10歳以上生きるのが普通、場合によっては15歳から18歳という長寿犬にも出会います。
前置きが長くなりました。今日は、すでに犬を飼っておられる方、獣医師とのお付き合いもある方に、高齢になってきた犬の扱い方についてお話ししたいと思います。今回もいくつか気をつけていただきたいポイントを挙げてお話しします。
1 犬種によってかかる病気は違う
宇宙人がセントバーナードとチワワを見たら、これほど大きさに差のある2頭をイヌ科イヌ属(Canis lupus familiaris)の同じとは思わないでしょう。体格に差があればかかる病気ももちろん違います。それぞれの犬種についての病気を知っておくことで、高齢になったときの対策も立てやすいのです。 代表的な疾患と、かかりやすい犬種をいくつか挙げてみました。■僧坊弁閉鎖不全症
僧坊弁とは左心房と左心室の間にある弁です。この弁が完全にふさがらない病気が僧坊弁閉鎖不全症です。かかりやすい犬種は、
- プードル
- チワワ
- ダックスフント
- ポメラニアン
- マルチーズ
- ヨークシャー・テリア
- キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
■椎間板ヘルニア
ヒトにもある、椎間板ヘルニアです。
- ダックスフント
- ウエルシュ・コーギー
■股関節形成不全
この病気は遺伝的疾患であると考えられています。発症しやすい犬種は大型犬で、
- ラブラドル・レトリバー
- イングリッシュ・セッター
- ゴールデン・レトリバー
- ジャーマン・シェパード
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
2 治療の方針は獣医師とよく相談して
僧坊弁閉鎖不全症は早期の発見と管理が大切です。投薬だけで症状がかなり改善するケースが多いのですが、定期的な通院が必要となります。また、外科的な治療が必要な病気については、獣医師とよく相談の上、治療方針を決めてください。場合によっては内科的治療だけで症状がある程度好くなるものもあり、また飼主さんがそちらを望まれることもあります。その理由は、「手術を受ける予算がない。」「高齢なのでこれ以上身体に負担をかけるのがかわいそうだ。」「家で看病する人がいない。」などさまざまです。
家族の負担があまり大きすぎると、治療そのものが続けられなくなり、かえって一番可哀想なのは犬です。
治療を始める際に、どのくらいの時間と費用がさけるかをよく話し合って、長く続けられる方法を選択してください。また、いきなり手術をすすめられた場合は、セカンド・オピニオンで他の獣医師の意見を聞くことも悪くないと思います。
3 飼主の行き届いた管理が必要
子犬のときは真っ黒だったプードルも歳をとると白い毛が増えてきます。