金銭信託は古くて新しい金融商品
「金銭信託」とは聞き慣れない金融商品かもしれませんが、信託銀行(りそな銀行を含む)が昔から扱っている金融商品です。信託銀行が多数の利用者から集めた(委託された)資金を管理・運用し、運用によって生じた収益を利用者に還元する商品です。運用によって収益は変わってくるのですが、あらかじめ「予定配当率」が提示され、提示された予定配当率通りの収益が支払われています。
予定配当率は、3月と9月の決算期に見直されます。信託期間(預入期間)が1年以上で上限なしとなっていることから、予定配当率は、預入期間1年以上2年未満に適用される1年物、同2年以上5年未満に適用される2年物、5年以上に適用される5年物という形で決められています。預入金額は最低5000円以上1円単位で、付利単位は100円となっています。
金銭信託の中には隠れたヒット商品も
通常、金銭信託といえば元本が保証されている商品=預金保険制度の対象商品を指しますが、元本が保証されていない商品=預金保険制度で保護されない金銭信託として「ヒット」、「スーパーヒット」、あるいは「実績配当型金銭信託」があります。余談ですが、ヒット、スーパーヒットの預け入れは10万円以上1万円単位(信託銀行によっては1万円以上に引き下げたところもあり)ですが、実績配当型金銭信託は100万円以上などとまとまったお金が必要となっていました。「なっていました」と過去形にしたのは、現在、ほとんどの信託銀行が金銭信託、ヒット、スーパーヒットの新規募集を停止しており、実績配当型金銭信託(予定配当率があらかじめ提示されているものを含む)もいくつかの商品が存在するに過ぎないからです。ただし、みずほ信託銀行が扱う金銭信託(予定配当率が提示されている)は、全体で1兆円以上の資金を集める隠れヒット商品になっているようです。
「eダイレクト金銭信託」は予定配当率0.5%と好利回り
今回、新たにオリックス銀行が取り扱いを始めた「eダイレクト金銭信託」は、預入金額は200万円以上100万円単位。信託期間は6カ月で、予定配当率は「0.5%」と決められています。預入金額は「実績配当型金銭信託」に準じていますが、収益については予定配当率が決められているため、通常の「金銭信託」という仕組みになっています。最低預入金額が200万円以上と預け入れのハードルは高いものの、注目した理由は予定配当率の高さです。予定配当率とはいえ、預入期間6カ月で0.5%を提示している金融商品はほとんどないからです。元本が保証されているわけではなく、また預金保険制度の対象商品でもありません。
私たちから集められた資金は、オリックス銀行が選定した企業(運用先)に対する貸付金として運用されます。通常、金銭信託は複数の企業に貸し付けるのですが、オリックス銀行のこの商品は1社への貸し付け。その分、リスクが高くなるのは否めません。ただ、第1号の貸し付け先は、親会社である「オリックス」。破綻することは考えにくいと思われます。断定することはできませんので、あくまでも筆者の推測です。心配であれば運用実績が出てから利用されることをおすすめします。
購入にあたり手数料は必要ありませんが、商品説明書(募集要項)を見ると信託元本に対して上限3.0%、下限0.01%の範囲内で信託報酬がかかるとされています。この信託報酬は0.5%の収益を控除した後の信託元本にかかるそうなので、過度に心配される必要はないと思われます。また、原則中途解約をすることはできません。
「eダイレクト金銭信託」第1号は即日完売
第1号は発売から13時間45分で即日完売となってしまったものの、第2号は2013年6月17日から同年7月1日に募集が予定されています。その第2号も第1号と同条件となる予定配当率=0.5%、信託期間は6カ月、募集予定金額は100億円です。運用実績がないため推測の域を出ませんが、予定配当率通りの収益が還元される実績が継続されるほど、人気は高まっていくと考えられます。今後に期待したい金融商品といえるでしょう。
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