相場の下落局面で収益が狙えるETFもある
相場の下落局面で有効なETFも
「たとえば、『TOPIXベア上場投信』(1569)は、TOPIXと逆の値動きを目指す『TOPIXインバース指数』に連動することを目指すETFです。TOPIXが10%下落した場合、このETFは10%上昇するイメージです」(カンさん)
ETFを「買う」ことで「売る」取引ができるのです。しかも、信用取引のようにお金や証券を担保にする必要もないので、心理的なハードルも低いといえるでしょう。
「たとえば、長期保有する予定の優待銘柄があったとしましょう。相場全体が下がって含み損を抱えそうなときに、このETFを買えば、多少なりとも価格下落リスクを軽減することが期待できるでしょう」(カンさん)
レバレッジ型・インバース型ETFは利確や損切りを確実に!
上昇局面で効力を発揮するETFもあります。「『TOPIXブル2倍上場投信』(1568)は、『TOPIXレバレッジ(2倍)指数』に連動する投資成果を目指すETFです。こちらは、TOPIXが10%上がったら、ETFは20%上昇するイメージです」(カンさん)
相場が大きく上昇しそうな時には、レバレッジ型ETFを買うことで、より大きな収益を得ることが期待できるのです。
ただし、レバレッジ型やインバース型に投資する際には注意も必要だとカンさんはアドバイスします。
「レバレッジ型やインバース型ETFが連動する指数は、原指数(TOPIXや日経平均株価など)の1営業日あたりの変動率の2倍、もしくは-1倍になるように設計されています。そのため、2営業日以上離れた期間になると複利効果が働きます。たとえばTOPIXが下げ続けた場合には、TOPIXインバース指数はTOPIXの変動率の-1倍以上になる可能性があるのです。一方、TOPIXが上げ下げを繰り返した場合には、TOPIXインバース指数自体の騰落率が、TOPIXの-1倍から乖離してしまいます。レバレッジ型についても同様のことが言えるでしょう」(同)
仮に、TOPIXが1ヶ月で10%上がったとしても、「TOPIXブル2倍上場投信」が+20%になっているとは限らないのです。TOPIXがずっと上がり続けていても、TOPIXの変動率の2倍から乖離する可能性がある一方、上げ下げを繰り返した場合には、損失を被る可能性もあります。
「レバレッジ型やインバース型のETFは、そもそも短期勝負に適したものです。それを長く持ち続けたら、本来の目的からも期待する収益からも乖離してしまいます。活用する場合には、利益確定や損切りを徹底しましょう」(同)
教えてくれたのは……
カン・チュンドさん
晋陽FPオフィス代表 ファイナンシャル・プランナー(CFP)
不動産会社勤務を経て、2000年7月に晋陽FPオフィスを設立。開業以来900名を超えるお客様から資産運用、ポートフォリオ構築に関する相談を受け、固定観念に縛られないアドバイスを行っている。著書に「日本人が知らなかったETF投資」(翔泳社)など。
監修/カン・チュンド(ファイナンシャル・プランナー) 取材・文/大山弘子
イラスト/竹松勇二 パネルデザイン/引間良基