自動車の町の繁栄と衰退
デトロイトは五大湖のほとりにある都市。かつては自動車産業で繁栄していた。
しかし、1970年代頃からアメリカ車よりも安価で性能のいい日本車などの攻勢にあい、アメリカ自動車産業は徐々に衰退。デトロイトの自動車工場では大規模なリストラが行われ、閉鎖される工場も数多く出ました。それ以外にも、工場が途上国などに移されるようにもなり、「自動車の町」としてのデトロイトは1950年代頃をピークに衰退を続けます。
デトロイトの人口はピーク時1950年代には180万人もいましたが、その後は工場の閉鎖による雇用の減少やそれに伴う治安の悪化によって、減少が止まりません。2013年現在では、デトロイトの人口はわずか70万人程度まで減少してしまいました。
急激に悪化する財政
衰退とともにデトロイトの財政状態は悪化の一途を辿り、追い討ちをかけるように起こったリーマンショック。以後、デトロイトの財政はさらに悪化し、住民にとっては耐え難いほどの歳出削減が行われます。去年実行された削減案では、デトロイト市内の街灯の点灯数がほぼ半分に減らされてしまいました。当然、その地区の住民にとって住環境は極度に悪化します。ここ数年は財政難で警官の数も減らしているため、治安の悪化も顕著。最後の頼みは、冗談ではなく「ロボコップ」になるかもしれません。
「財政非常事態」を宣言
財政が自力で何とかできるレベルを超えて悪化したため、3月1日、ミシガン州知事がデトロイトの「財政非常事態」を宣言しました。デトロイトはこの後、10日間の意見申立期間が与えられ、その意見次第では財政非常事態宣言を取り消すことができます。しかし、10日間経っても非常事態宣言の取り消しは発動されず、今後はミシガン州の命じた財政管理者がデトロイト財政の建て直しを請け負うことになります。3月14日に任命された財政管理者はケビン・オア氏という弁護士で、かつて自動車メーカーのクライスラー再建を任されて成功したことのある人物です。今回、オア氏にはミシガン州からデトロイト財政に関して相当強大な権限が与えられており、再建ができるかどうかはオア氏にほぼすべてかかっています。一方、再建不可能と判断すれば、連邦破産法第9条の適用を申請して、デトロイトを財政破綻させることも考えられます。