アルバム第1弾『Toy2』
さて、そんなユ・ヒヨルが、ソロ・プロジェクト”Toy”を率いて!?リリースしたアルバム第1弾が、その『Toy2』だったのです。96年に韓国KING RECORDS(日本のキングとは関係ありません!)から発表したこのアルバムは、可能性のある新人に歌わせるという形式を導入したプロジェクトアルバムという形式をとった作品でした。
演歌っぽいイメージの強い、韓国の伝統歌謡の域を軽く超越した、そのおしゃれなサウンドは、“ニュー・ミュージック”と言えばそれまでですが、ファンク、 ジャズ、ポップなどなど、様々な音楽ジャンルを取り入れた、ごった煮的なアルバムだったんです。そんなサウンドに、必ずと言っていいほど恋愛で成就できな い男子を主人公にした、そのあまりにもせつな過ぎる歌詞が乗せられ、韓国的な(ともすれば演歌っぽく感じてしまう)バラード感が絶妙にマッチした、日本の 音楽にはない、独特な“哀愁感”が漂う、そんな作品でした。
特に、韓国ポピュラー音楽史に残る傑作バラード曲と言われている「僕が君の側にしばらくいたということを」は、出色の出来。
とてもシンプルなアレンジのも関わらず、切々とその切ない恋心を吐露した歌詞は、見方によってはかなり女々しく感じるかもしれません。でも、そこをギリギリ のところで、傑作ラブバラードに仕上げているところが実に巧み!さらにこのアルバムには、現在シンガーソングライターとして圧倒的なキャリアと人気を誇る、ユン・ジョンシン、イ・ジャンウ、チョ・キュチャンといった人気者が、コーラスだけで参加しているという事実。韓国音楽が好きな人であれば、間違いな く、しびれる1枚だと思います。
フィーチャリング・ヴォーカリストとして参加しているキム・ヨヌとキム・ヒョンジュン(といっても SS501の彼ではありません!)は、このアルバム参加後ソロデビューを果たし、それぞれがソロのシンガーとして成功を収めています。そう、Toyという ソロ・プロジェクトに課せられたのは、単に良い曲、良いアルバムを発表するだけにとどまらず、良い新人を発掘することでもあったんです。
韓国音楽のイメージを変えた1曲
僕はこのアルバムを聴くまで、先に挙げたような韓国音楽のイメージと、日本の曲をマネしたものが多く、とにかく(結局食わず嫌いだったわけですが)ダサいという先入観がありました。それがこの『Toy2』と出会い、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けました。韓国にも、こんなにすごいポップスがあって、こんな洗練された音楽を作ってい るアーティストがいるんだということを知って、ショックを受けたのと同時に、同じアジア人である自分が、なぜ今まで“韓国”をバカにしていたのかという情 けなさに、しばらく立ち直れなかったほど、たった1枚のCDが僕の韓国感を大きく変えたのです。
それからというもの、CDがすり減るくらいいろんな韓国のCDを借りては聴きつぶしました。当然、言葉なんてわかりません。でも、いつしか何となく、韓国語の歌を口ずさんでいた自分がいたんです。結局、このアルバムと出会い、それがきっかけとなって、この後、カナダ留学を放棄して、韓国へと旅立つことになるわけですが、僕にとって韓国音楽との出会いは、人生観までも大きく変えるきっかけとなったんです。
今となっては、インターネットでYou Tubeなどを使えば、リアルタイムに韓国の最新音楽から、過去の名曲まで自由にいつでもどこでも聴ける時代になりました。でも当時は、韓国音楽を聴くこ との出来る手段は限られていたため、今という時代が、韓国音楽を楽しむのにあたって、いかに便利であるかを多くの人に知っていただきたいですね。
このAll Aboutを通じて、そんな忘れられない韓国音楽との出会いや、知らなかった魅力、その背景にある社会や環境など、あらゆる角度から、ここでしか得られないオンリーワンな韓国音楽情報をこれから提供していきたいと思います。
アルバム情報
Toy(ユ・ヒヨル)
第2集“Youheeyeol”
96年
KING /KSC-6024