電子書籍/電子書籍の問題点

セルフパブリッシングはなぜ初音ミク足りえないか?(2ページ目)

初音ミクを利用して自作の曲を世の中に発表し、それが商用セールにつながるという現象があります。しかし、電子書籍では世の中に問う敷居が高いと思います。その辺りを考えてみましょう。

執筆者:上村 充弘

初音ミクとセルフパブリッシング

初音ミクとセルフパブリッシングの関係性は、コミュニティでもありプラットフォームでもある「ニコニコ動画」内にシンボルとして存在する「初音ミク」をユーザーがプロデューサーとして育てていき、そこにファンがついていくという構造でした。自分の音楽表現、そこにシンボルとしての初音ミクが存在したわけです。先ほどの日記猿人も、各日記書きさんのファンと日記猿人というコミュニティとしてのコンテンツが有りました。

しかし、セルフパブリッシングはシンボル的な存在がなく、レベニューシェアでの著者取り分の多さだけが注目されています。
自分の表現に対して、プラットフォームと、そこに何をどのように打ち出していくか?が見えないまま、コンテンツの読み手(コミュニティーやファン)不在で供給過剰の状況が、現在のセルフパブリッシングの世界だとガイドは考えます。

プロデュースの重要性

初音ミクはボカロPという言葉が生まれたように、初音ミクに対してどのように打ち出していくかをプラットフォーム(市場)にいるユーザーやファンの声に答える形でコンテンツが作成されて行きました。

しかし、セルフパブリッシングについてはシンボルは自分になっており、個人でコンテンツを作るまではできるものの、セルフ・プロデュースをできている人がいません。セルフパブリッシングである程度のダウンロード数(月間1000ダウンロード)のある方は、セルフ・プロデュースについてもある程度うまく行っている様に見受けられます。

紙の本であれば、編集者がコンテンツを作る著者をうまくプロデュースして売れる本にしていました。なぜセルフパブリッシングでは、自らのコンテンツを作る側としてプロデュースを無視した形でのコンテンツが生み出されるのでしょうか?

コンテンツを生み出すだけではコンテンツは売れないですし、コンテンツを広めたり、ユーザーの求めている様な方向性を示したり、コストと想定ダウンロード数の管理を行う等、売れる形に持っていく作業が必要になります。つまり、プロデューサーという役割が必要になります。

出版の世界で、それを今までやってきていたのが編集者なのです。

見えてくる出版社の役割

まとめると、現状のセルフパブリッシングは、コミュニティに対するアプローチ、ファンの獲得が出来ておらず、自分の思いをぶつけているだけに見えます。たまたま刺さった場合でもいいですが、読み手(ファンやコミュニティ)が欲している物を作って行かないと、セルフパブリッシングはコンテンツの読み手不在でコンテンツの供給過剰の状況になってしまいかねません。コンテンツ制作が増えて読み手不在の状況では、ユーザーは離れてしまいます。
Paberish

Paberishは読者がつかないと電子書籍を発行出来ない


Paberishというセルフパブリッシングサービスは10人の読み手がつかないとコンテンツ販売出来ない仕組みになっています。

読み手10人が読みたいと思ったコンテンツなので、ある程度安心して購入することができるのです。

今まで紙の本を出す際の主導権は出版社側に有りましたが、今後はコンテンツ制作側が主導権を持ち、セルフパブリッシングをサポートする出版社が出てくるとガイドは予想しています。

シンボル

初音ミク足りえないか?から随分離れてしまいましたが、ガイドはセルフパブリッシングを考える一つのきっかけになればと思っています。そして、セルフパブリッシングに読み手(ファンやコミュニティ)の求めているものを意識した形を望みます。セルフパブリッシングプラットフォームは、シンボルをうまく作り出せるか?ということなんじゃないかなと思っています。

「初音ミク」はクリプトン・フューチャー・メディア株式会社のキャラクターです。
(C)Crypton Future Media, INC. www.piapro.net

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