ED治療薬の効果は非常に高く、服用した人の約7割が満足しているという調査結果もあります。この薬は「豊かな性生活を手助けする」という意味で、服用した男性ばかりでなく、パートナーの女性にも深い満足をもたらしてくれます。
その意味では、局部的な改善よりも“生活全般を改善する薬”としての色合いが濃いともいえます。ED治療薬は医師の診断を受けて処方されますが、健康保険がききません。ですから、1錠あたりの単価は市販の胃腸薬などに比べると、どうしても割高になります。また、受診を恥ずかしいと感じる患者さんも少なくありません。
こうした状況に着目して横行しているのが、インターネットを利用した通信販売で売られている「偽造薬」の数々です。
健康被害をもたらしかねない偽造薬
偽造薬の使用は薬としての効果がないばかりか、不衛生な製造環境や含まれる成分を原因とする健康被害をもたらす恐れがあります。このため、ED治療薬の製造や販売に関わっている国内製薬会社4社は、定期的に情報交換の会合を開いたり、啓発のための活動を行ったりしています。
2012年7月に行われた4社合同プレスセミナーでは、友人の外国人からもらったED治療薬を飲み、もうろうとした状態で病院に救急搬送された男性の事例が紹介されました。問題だったのは、ED治療薬を飲んだことではなく、それが偽造品であったことです。
もらった薬の正体は「糖尿病治療薬」
ED治療にはまったく関係ない成分を含む偽造薬で健康被害を受けることも
そこで、この人の血液を調べてみると、最も低血糖を起こしやすい、高濃度の糖尿病薬成分が検出されました。つまり、もらったED治療薬の正体は、勃起改善にはまったく役立たない、糖尿病の治療薬だったというわけです。
この結果、救急車で運ばれたときの意識障害の原因は極度の低血糖で、偽造ED治療薬に含まれていた血糖降下薬の成分によるものであることが分かりました。
この人に薬を渡した外国人がどのような経路で入手したかは不明ですが、この例のように、まったく効き目のない成分に色を着けただけという粗悪な代物は、インターネット通販で相当量流通していると考えられています。
インクで正規品に似せる手口も
偽造のED治療薬は世界中で製造されており、日本を含む60カ国で発見されています。少し古いデータですが、2010年中に警察が検挙した無承認医薬品広告・販売事件では、出所が国外と判明したもののうち、約56%が中国本土から輸入されたものでした。摘発された事件の資料写真によると、偽造ED治療薬の製造現場は正規品の製造工場とは比べ物にならないほど粗末で不衛生です。中にはプリンター用のインクを混ぜて正規品に似せているものもあるそうです。
製造現場ばかりでなく、流通経路における品質管理にも問題があり、アパートの一室などでボトル詰めされていたり、ポリ袋にバラの状態で送られたりします。
摘発された製造現場からは刻印を打つ金型も見つかりました。中には、正規品と並べても区別できないほど精巧につくられた偽造品もあります。実在しない用量の偽造品が出回るなど手口も大胆になっています。
安易な入手は結局、高い買い物に
入手の手軽さや値段の安さだけで飛びついたツケは高くつくことを肝に銘じよう
4社合同プレスセミナーで紹介された例のように、偽造品の恐さは重大な健康被害を引き起こす可能性が極めて高い点にあります。もともとの出所が怪しいのですから、副作用に対する保障は誰もしてくれません。
入手の手軽さや値段の安さだけで偽造品を使っても、その後の手当てや治療を考えると結局は無意味になってしまいます。ED治療薬は専門医や専門機関の診察を受けて処方されたものを使うようにしましょう。
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