大町桂月が愛した温泉 蔦温泉旅館
十和田樹海の森で湯けむりを上げる蔦温泉は1147年に開湯と伝えられる一軒宿です。斜面に建つ旅館は磨きのかかった階段や廊下で結ばれています。それだけで時間の大きなうねりを感じます。木造の本館は山小屋の香りがします。それもそのはずで、玄関脇のロビーには薪ストーブ置かれています。多くの作家が蔦温泉に遊びました。壇一雄の小説「火宅の人」の主人公と恵子「ことがおこった」トップシーンには蔦温泉が登場します。その「泉響の湯」は作家の井上靖が「泉響颯颯」とその様を言い表したようにブナの木で造られた浴槽の底から湯がサツサツと湧き出ています。とても高い天井が不思議な空間を演出しています。
明治の紀行作家の大町桂月(おおまちけいげつ)が「住まば日本 遊ばば十和田歩きゃ奥入瀬三里半」と詠み、十和田湖と奥入瀬渓流、蔦温泉を世に紹介しました。最後は住民票を蔦温泉に移すまでに十和田を愛した桂月。酒もこよなく愛し、酒仙と呼ばれました。
桂月が酒器として使った理科のフラスコが桐の箱に収まって旅館に保管されています。青森県内には桂月の文学碑が多く残っています。
通年、9月の末頃、八甲田山の頂上が色づき始め、10月初旬には八甲田山周辺のナナカマドが紅く染まり、10月中旬にはブナ林が黄色く染まり、10月中旬から末にかけて十和田湖に紅葉が移っていきます。
■蔦温泉旅館
・住所:青森県十和田市奥瀬字蔦野湯1
・電話:0176-74-2311
・営業時間:9:00~16:00
・休業日:通年営業
・料金
【宿泊】1泊2食9600円~
【年末年始】1泊2食付、本館12750円
【日帰り入浴】大人500円、小人(小学生)200円
※冬季:年末年始以降冬季は西館のみの営業
・アクセス:JR青森駅からJRバス十和田湖行きで1時間50分、蔦温泉下車すぐ