少額から始め、あくまで長期保有で
金投資に興味があるという人は、実際にどんなスタンスで純金積立を始めればいいのでしょうか。ファイナンシャル・プランナーの野尻美江子さんはこうアドバイスします。「まず、長いスパンで、最低10年くらいは持ち続けるといった意識が大切だと思います。もちろん、短期的な売買で利益を出せる可能性もありますが、先に述べましたように、需給や地政学的リスクを含む世界の動きと為替という大きく捉えても2つの変動を読まければなりません」
金価格はここ数年急騰を続けていますが、今後もこれが続くとは限りません。ましてや、金利も配当もありません。「金」という商品がもつ特徴を世界情勢の中で見極め、売却時期をあらかじめ決めるのではなく、あくまで売却に適したタイミングが来るまでじっくり保有し続ける、そんな商品と考えていいでしょう。
「また、タイミングを見たスポット購入はありですが、大きな売却益を狙って、購入額をやみくもに大きくすることは避けるべき。そもそも、純金積立は少額で手軽に始められるのが利点です。それを活かし、月3000円の積立で十分でしょう。まったく投資の経験がない人なら、最初は1000円から(一部の取扱会社)でもいいと思いますよ」
他の投資商品と合わせ持つと効果的
実際に資産づくりに純金積立を組み込む場合、注意したいのがすでに外貨建ての商品を保有しているかどうかです。具体的には外貨預金、外債、外貨建てのMMFや為替ヘッジなしの投資信託など。国内の金価格は為替の影響を受けますから、純金積立は外貨建て商品という側面があります。したがって、資産の中で外貨建て商品の全体の割合をしっかりと把握しておくがことが重要なのです。意図せず、これらの商品が増えてしまうと家計のリスクアップにつながってしまいます。その上で、より純金積立の特性を活かすには、まずは外貨建てではない投資商品との組み合わせだと野尻さんは言います。
「投資商品でポートフォリオを組んだとき、国内の株式や国内債券なとど合わせて持つことで、投資全体のバランスが良くなります(図参照)。その上で、外貨建て商品全体の割合を検討し、金の割合としては投資額全体の1割程度でいいでしょう」
金価格は個別の国や企業業績の悪化にあまり影響を受けない、という性質があります。結果的に、株安や債券安、低金利のリスクヘッジにもつながるのです。
「そして金投資で大切なのは、金に関心がある、金投資を始めたいという気持ちです。金はハードルが高い商品と言いましたが、裏を返せば金を知ることで、世界の経済や政治、株価、金利、為替、資源の動向を知ることにつながります。金を経験することで、あらゆる投資の下地ができるはずです」
次ページでは、家計に純金積立を始める余裕がない場合の対処法をレクチャーします
監修/野尻美江子(ファイナンシャル・プランナー) 取材・文/清水京武