貯蓄/平均貯蓄額などの気になるデータ

資金循環統計から「家計の金融資産」の内訳を見る

ほとんど話題にはならなかったものの、2012年12月21日に日本銀行から同年9月末の資金循環統計が発表されました。家計全体の金融資産は、2012年6月末と比較すると5兆円程減少していますが、現金・預金の合計は前年比で1.9%も増資しています。資金循環統計から、家計の貯蓄行動を見てみることにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニックガイド

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資金循環統計とは家計の最新データのこと

最新のデータにおける日本人の平均貯蓄額は?

最新のデータにおける日本人の平均貯蓄額は?

資金循環統計とはあまり聞きなれない言葉かも知れませんが、日本銀行が四半期ごとに作成、公表している統計データです。毎年、3月、6月、9月、12月に前四半期末の速報値並びに前々四半期の確報値が公表されています。たとえば、今回の12月ケースでは、前四半期末=2012年9月末の速報値と前々四半期末=2012年6月末の確報値が公表されたことになります。

資金循環統計は、1つの国(日本)で生じる金融取引や、その結果として金融資産・負債を、企業、家計、政府といった各経済主体ごとに、また金融商品ごとに包括的に記録した統計になります。

活用、利用法としては、企業、家計、政府という各経済主体の金融資産・負債、資金運用・資金調達額、およびそれらの内容を商品ごとに把握することが部門別のデータからできます。

また、取引項目別のデータを見ると、金融商品、金融市場単位の総額、企業、家計、政府という各経済主体の保有状況などがわかります。さらに、金融商品、金融市場の発展・活況度合いを読み取ることもできると言われています。

少し難しい説明になってしまいましたが、家計の状況に関するデータの公表のほんどは、1年ごとの調査・公表が一般的ですから、3ヵ月ごとに公表される資金循環統計は、家計の最新の状況を窺い知ることができる貴重なデータと言えるでしょう。

ただし、世帯家計単位ごとなどの平均値(あるいは中央値)が公表されているわけではなく、経済主体である家計全体を1つの単位としているため、一般の人にはとっつき難いと思われます。とはいえ、家計の全体像を見ることにより、家計の貯蓄動向などを読み取ることは可能です。では、詳しく見ていくことにしましょう。

2012年の金融資産額に大きな変化はなし

2012年9月末の統計データを見ると、家計全体の金融資産額は1510兆円です。同年6月末は1515兆円、同年3月末は1518兆円ですから、半年で8兆円の減少になります。しかし、対前年比で比較すると1.4%の増加となっています。家計の負債額(自営業者を含む)は同年9月末で354兆円ですから、1510兆円-354兆円=1156兆円が家計における純金融資産額ということになります。

総務省が公表する人口推計によれば、同年9月1日現在の総人口は1億2752万人。純金融資資産額1156兆円を総人口で割れば、約907万円。負債を考慮しない1510兆円で同様に計算すると、約1184万円になります。老若男女問わず1人当たりの平均値になりますが、皆さんはこの金額を見てどのように感じられますか。わが国は失われた20年、あるいは30年などと揶揄されていますが、依然としてかなりの金融資産を持っていると言えるでしょう。

金融資産の内訳(比率になります)を見ると、大きく減らしたのが債券で前年比-8.8%の減少、株式・出資金-2.4%です。債券は金利が高かった2007年当時の個人向け国債などが満期を迎えたことその要因で、満期を迎えたお金は個人向け国債以外の商品に預け替えられたと思われます。予断ですが、2007年9月募集の第8回個人向け国債の金利は1.15%、2012年9月募集の第28回債の金利は0.17%でしたから、預け替えもうなずけるところです。

株式・出資金がマイナスなのも、株式市場がやや低迷気味であったため致し方ないのかもしれませんが、投資信託は4期連続マイナスであつたものが1.5%のプラスに転じました。「為替ヘッジあり」タイプの外国債券ファンドあたりが牽引したのかもしれません。

一方、堅実に資産残高を増やしているのが、現金・預金です。2012年9月末も1.9%増となっています。資産構成割合でも全体の55.6%を占めています。不透明な資金運用環境、なかなか収入が増えないことから、低金利に甘んじているとはいえ、安全確実な預金でしっかり貯める、しっかり守るという意識が窺えます。

また、保険・年金準備もプラス1.7%と現金・預金に次いで気を吐いています。9月末と途中経過になりますが、2012年を通じて期を追うごとにプラスの割合が増加しています。公的年金の不安を反映して、自助努力で何とかしなければならないと思ったのかもしれません。あるいは、2013年4月から保険の予定利率の引き下げが予定されていることから、貯蓄性の高い保険商品の駆け込み加入が始まっているのかもしれません。

あくまでも、家計全体の統計データですが、皆さんの家計を全体の動きと比較してみるとよいでしょう。そして、今後の金融資産選択の参考などにしてみてください。

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