2008年にも物価は少し上がったが……
日本の物価は過去20年でほとんど変わっていない
上図は、過去20年の日本の消費者物価指数推移です。20年間、ほぼ0%の付近で推移しており、日本のインフレ率はほぼ0であったことを意味しています。インフレターゲット2%ということは、このグラフが長期的に2%前後で推移することが目標になります。
ところで、このグラフの中で際立って高くなっている部分があります。それは平成20年(2008年)前後です。この時期、何があったか覚えているでしょうか?
2008年前後は、世界的に先物への投機熱が高まり、食糧や原油などの先物価格が非常に高騰した年でした。原油は1バレル=約147ドルというという史上最高値をつけ、日本のガソリン価格も1リットル=180円前後まで上がりました。
食料品価格も同じように高騰し、消費者物価指数のグラフも高くなったのです。
賃金に反映されるかどうかが問題
2008年当時、「景気がいい」「暮らしが楽になった」と感じた人はいたでしょうか?それほど多くなかったと思います。 ガソリンや食料品などの物価は上がりましたが、物価が上がっただけで、サラリーマンの給料はそれほど上がりませんでした。こうなると、市民の暮らしはさらに苦しくなります。ここで、チャートの一部をまた持ってきます。
物価が下がる
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企業が自社の製品を売るため、他社よりも価格を下げようとする
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価格を安くするために働く人の給料を下げる
このような状態が無限に続くデフレスパイラルから脱するために、安倍総裁はインフレターゲットを設定しようとしています。つまり、成功すれば上のチャートが反対になって、以下のようになります。
物価が上がる
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価格が高くなったので給料も上がる
しかし、物価や製品価格が上がっても、それが賃金に反映される仕組みができているかどうかが問題です。今の日本は、賃金を抑制する仕組みができてしまっており、覆すのは容易ではありません。結局、以下のようになって終わるだけかもしれません。
物価が上がる
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価格が高くなっても給料は上げない(上がらない)
これでは労働者の生活はさらに苦しくなります。2%のインフレターゲットを設定して、その実現のために無制限金融緩和をする。そこまではいいかもしれませんが、問題はどう賃金に反映できるか。ここは現段階では判然としていません。