志の輔師匠の鋭い観察眼が笑いのネタを生む
立川志の輔師匠は創作、古典作品のどちらを演じても超一流。機械の問題点をネタにした「おどるファックス」、古典落語の要素もある創作落語の「親の顔」、日本人の予めをネタにした「ハナコ」など聞き応え抜群です。
■親の顔
この落語は立川志の輔師匠がプロになってから初めて創作した落語ですが、古典要素がふんだんにあり、親の顔がみたいという昔ながらの諺がネタに使われています。
噺は隠居さんの家に友人の八五郎がやってきて、学校の先生に息子の金太君のテストのことで呼び出されたという内容です。答案用紙の点数は100点満点で5点。きっと親の顔がみたくなったんだろうと隠居が述べて学校へ向かいます。
最大の見所は答案用紙の答えがとてもユニークなところ。例えば、81個のみかんを等しくわけるなら、何人に分けられるかという問題に、答えはミキサーでジュースにするといった感じです。金太君が実は相当賢い子だというどんでん返しが愉快です。
■おどるファックス
この噺は状況から笑いを作るのがお見事。粗筋は、吉田薬局が新しく購入したFAXを使って、クリスマスセールの宣伝文句を作っていたところに、ある間違いFAXが届きます。内容は恋人に振られて薬を飲んで死んでやると、自殺をほのめかす文章であったため、このままにしてはいけないと父が文章を考えて、息子のたかしが書いて、母がそれを送信していきます。
見所は自殺するかもしれない女性のFAX文章です。かなり精神的に参っているようで、FAXの文章が怖い。しかも、お互いに送信しているうちにどんどん泥沼化していきます。FAXの欠点を巧みに突いた面白い落語に仕上げています。
■ハナコ
立川志の輔師匠の新作落語。
日本人の予めという予防策をネタにした噺となっており、話題作りが巧みです。粗筋としては、温泉旅行に出かけた三人の会社員が予めに予防策を張りまくる温泉旅館へ一泊することになります。名物は温泉と黒毛和牛の食べ放題です。
見所は予めという言葉。聞いてもいない言葉を喋りまくる宿の女将。宿の非常口から、温泉の源泉に至るまで詳しく語ります。その話に疲れた会社員が温泉に入っているところ、温泉の女将が竹林で妙な行動をしているのを目撃します。後で、そのことを女将に聞いてみるととんでもない落ちが待っています。もう一つはハナコとはいったい何者なのか考えながら見るといいです。