リアリティのあるキャラクターで大爆笑を産み出す
立川志の輔さんはマクラから本編に入るのがとてもスムーズ。簡単な小話から笑いをとり、観客を本編に誘導していきます。
■らくだ
長屋を扱う落語の中でも有名な噺で、長屋で大層評判が悪いらくだというごろつきがフグの毒に当たって死んでいるのを兄貴分の丁目の半次が発見したところから始まります。
半次はたまたま長屋で声をかけていた屑屋を呼び、香典代や酒をもらってこいと脅します。
立川志の輔さんが演じる半次が優しくいってるうちにと、屑屋を脅す場面がとてもリアリティがあって楽しいです。そして、この脅しが思わぬ形で大爆笑を産み出します。
長屋の人々はらくだを大層嫌っており、最初は酷い目に遭わされたエピソードを語るのも面白いです。らくだの名前を出した途端、皆、嫌な顔をします。後、依頼を済ませて屑屋が無理矢理、酒を勧められて飲んでいるうちに豹変するシーンです。
■買い物ぶぎ
この噺は、風邪で寝込んだ妻の代わりに買い物に不慣れな旦那さんがメモを片手にドラックストアに出かけました。そして、バイトの店員にメモを読み上げながら、商品を選んでもらおうという話なのですが、店には様々な商品があり、疑問に思った旦那さんが色々質問していくといった内容です。
特に面白いところは拭き掃除に使う洗剤のシーン。風呂用、台所用、カーペット用などの専門の場所があるのに、最後は全ての所で使用可能な洗剤が置いてあるという。この洗剤があればどこでも使えるのに、他の洗剤の立場はどうなるんだと旦那さんが心配しているのが愉快です。質問に困って店員がどんどん泣きそうな声になっていくのも見所です。
■こぶ取り爺さん
立川志の輔さんオリジナル。
ある日、翻訳家が昔話全集の翻訳をアメリカのマイケルさんに頼まれました。
しかし、マイケルさんはこぶ取り爺さんだけ、翻訳全集から省きたいといいます。
なぜかと聞くと、何が言いたいのか意味がわからないからと答えます。
翻訳家は家族を巻き込んで、この難題に取り組みます。どうして二番目の爺さんはこぶを付けられたのか。踊りが下手だから鬼が怒ってこぶを付けたという理由を説明すると、踊りが下手だと悪いのかと聞き返してきました。
他の家族もそれぞれ考えた理由を説明しますが、どれもこれも納得が行くのに、その理由にはたどり着かない。そして、最後のマイケルさんを納得させる答えがとても上手です。