ショーケースの上には、「マロンパイ」や「アップルパイ」(350円)といった焼きっぱなしのお菓子も並びます。サクサクのパイの中に、濃厚なマロンペーストを練り込んだクレームダマンドと渋皮栗入りのマロンパイは、背が高く見た目も存在感のある一品。オープンから1週間ほどして再訪したところ、「なんとなく一味物足りなかったので、ラム酒風味のグラスロワイヤルをかけてみました」と、現状に満足せず、さらなる研究に余念の無い菊地シェフです。
アップルパイは、下に敷いたクレームダマンドの中にビスキュイショコラを散らしてあり、焼いているうちに、上に並べたりんごの果汁が浸みこんでいくと、なんとも言えないよい香りを醸し出すのがこだわりなのだそうです。
冷蔵ケース内の華やかなケーキの中に、洋梨の「タルト・ポワール」やりんごの「タルト・ノルマンディーズ」といった、見た目は素朴な焼き菓子も並んでいます。りんごを薄切りにして並べてのせたタルトは、パリで話題の「セバスチャン・ゴダール」で働いた時に作ったお菓子を元にしているそう。りんごには少しシナモンが加えられ、ベースのクレームダマンドはりんごの果汁を吸いこんで、想像以上にジューシー。シンプルでいてしみじみと美味しい、伝統的なフランス菓子のスタイルを大事にしたお菓子達です。
焼き菓子の中でも、パッケージに凝ったのが「恵比寿フィナンシェ」と「恵比寿ショコラ」の2種類。恵比寿にちなみ、鯛を持った恵比寿様が描かれた袋入りのフィナンシェと、フィナンシェショコラです。どちらもシンプルですが、フィナンシェは菊地シェフのスペシャリテ。焦がしバター入りの香ばしさと、バニラとはちみつの調和を楽しんでほしい、とのことです。
このような、地域にちなんだ商品名やパッケージのアイテムは、菊地シェフが修業された「アルパジョン」「ヴォアラ」の焼き菓子に多く見られ、棟田シェフの影響を感じさせるものでした。恵比寿ならではのお土産として、ギフトに喜ばれそうですね。
ところで、店名の由来となった「Les Années Folles(レザネフォール)」とは、フランスの1920年代の時代を指す言葉です。19世紀末から第一次世界大戦前に、パリが反映した華やかな時代とその文化を「Belle Époque(ベル・エポック)=良き時代」と呼びます。
これに対して、第一次大戦後、世界大恐慌が勃発するまでの1920年代は「狂乱の時代」とも呼ばれ、ピカソやコクトーといった数多くの文化人が活躍し、やはり自由と活気に満ちた繁栄の時代でした。
菊地シェフは、そんな、様々な文化やアイディアが生まれた時代になぞらえて、この店名を選んだそうです。
師匠達から受け継いだ教えと、フランスなど海外の修業先で学んだ経験とが融合した、菊地シェフのお菓子。「レザネフォール」の時代のごとく自由な想像力に満ちあふれて、恵比寿の地でどのように展開していくのか、今後が楽しみです。
<ショップデータ>
パティスリー レザネフォール
東京都渋谷区恵比寿西1-21-3
電話 03-6455-0141
営業時間 10:00~22:00
定休日 ※しばらく不定休
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。