米国で巻き起こるシェールガス革命
シェールガス革命は世界のエネルギー地図を塗り替えるかもしれない・・・
2005年に日本の千代田化工建設がカタールで当時1兆円の受注残を抱えていたのは、当地でエクソンなどの石油メジャーが開発する世界最大の液化天然ガス(LNG)プラントからの発注によるものでした。気体のガスを摂氏マイナス162度で液体化し、特殊なタンクなども必要なLNGプラント施設は日本が得意とする技術です。当時米国では天然ガスの需要が供給に追いつかず、世界3位の埋蔵量を持つカタールで採掘し、それを液化して米国に輸入しようという将来図でした。当時の米国天然ガス価格も需給逼迫により非常に高値がついていました。実際、この一大プロジェクトによってカタールはインドネシアを抜いて世界最大のLNG輸出国となったほどです。
ところが今やカタールのLNG輸出は米国向けに想定していたものの多くが不要となりました。米国はシェールガスの大ブームによって自国で大方を賄えるようになり、あてが外れたカタールは、そのキャンセル分(実際には契約していないのでキャンセルではありませんが)を原発事故で1000万トンものLNG輸入を増やした日本へ輸出を増やす形です。米国ではカタールからのLNG輸入どころか、国内大量供給によって天然ガス価格が暴落、さらには不足する(純輸入国)とまで言われていた天然ガスの純輸出国に変身しようとしています。
大幅に値下がりする天然ガス価格
ニューヨーク商品取引所で取引されている天然ガス先物価格は、メキシコ湾近くの米ルイジアナ州、ヘンリー・ハブという貯蔵施設にあるガス価格を指します。そして、この先物価格の第1限月と第3限月によって指数化される天然ガスの指標をダウ・ジョーンズUBS天然ガスサブインデックスと言います。そしてこの指数に連動する形で世界で天然ガスのETFが複数上場されています。日本に上場されているものでは東証1689 ETFS天然ガス上場投資信託というETFがそれにあたります。東証1689 ETFS天然ガス上場投資信託の株価推移
このETF価格は2年前に40円を超えていたのが、現在僅か11円というところまで下がっています。円高の影響もありますが、多くは米国におけるシェールガス革命による価格の下落です。もしも企業の株価がこのような形に下がってくれば、その先の倒産を暗示している可能性が濃くなってくるところです。しかし、商品にそれはありません。天然ガスに倒産はなく、価格が0になることもありません。ただ、大きなサイクルでのアップダウンが繰り返し歴史の変化とともにあるものです。
米国の天然ガス価格指標であるヘンリー・ハブの先物価格は4月に2ドル近くまで下がり、その後反発はしているものの依然4ドル以下で推移しており、十数年来の最低水準の価格帯にあります。ところが同じ天然ガスでも、日本の火力発電用に輸入されるLNGガス価格は、液体か気体かというコストの違いはあるものの、長期契約もので16~17ドル、現物手当てのスポット物で18ドルという高値がついています(共に100万BTUというガスの英国式単位)。アジア向けのガス価格は史上最高値近辺にあり、シェールガスと大きな差がでています。シェールガスと言っても掘削方法が特殊なだけで(水平堀で水圧破砕法)、同じガスには違いありません。
>>>次のページではシェールガス革命における投資チャンスを探ります