相続・相続税/生前贈与・贈与税の基礎知識

暦年課税と相続時精算課税どちらを選ぶ?贈与税の選択(2ページ目)

個人から贈与を受けると贈与税の対象になります。贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税制度があります。損得がありますので、どちらの課税制度を選んだらよいか、判断基準となるポイントを確認しておきましょう。

執筆者:加藤 昌男

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相続時精算課税の計算例

■事例:70歳の父から40歳の子が贈与を受けた場合

平成20年に1000万円の贈与を受けた場合:
1000万円 < 特別控除額2500万円 → 贈与税の申告必要だが納税なし

さらに平成21年に50万円の贈与を受けた場合:
通算1050万円 < 特別控除額2500万円 → 贈与税の申告必要だが納税なし
注)暦年課税の基礎控除(110万円)はありません。

そして、平成22年に1950万円の贈与を受けた場合:
通算3000万円 > 特別控除額2500万円 → 贈与税の申告・納税あり
納税額:(3000万円-2500万円)×税率20%(一律)=100万円(納付税額)

平成24年に父死亡、法定相続人3人で相続財産2000万円の場合:
2000万円+3000万円=5000万円 <= 相続税の基礎控除額8000万円(※)
相続財産と相続時精算課税の適用を受けた財産の合計額が相続税の基礎控除額以下であるため、相続税申告義務はありません。しかし、相続税の申告をすれば100万円の還付が受けられます。

(※)5000万円+1000万円×3人
 

相続時精算課税の目的

相続時精算課税の目的は?

相続時精算課税の目的は?

相続時精算課税の目的は、経済を活性化するために贈与を促進することです。暦年課税制度では前ページで解説した通り、高額な贈与を行なうと高額な贈与税がかかります。暦年課税は相続税から逃げられないようにする制度ですから、そもそも相続税がかからない人には関係ありません。相続税がかかる人は4%(相続税申告件数/死亡者数)といわれています。つまり、4%の人のために96%の人の贈与も抑制されているというわけです。

そこで、相続税と贈与税を一体化して、相続税がかからないなら贈与税もかからない制度を作りました。高齢者の豊富な資産を子世代に渡すことでお金を使ってもらい、経済を活性化しようというものです。相続税がかからない人のための制度です。

なお、将来、相続税の基礎控除が下がる可能性がありますので、そのことも考えて選択する必要があります。
 

どうする? 課税制度の選択

基本的には「暦年課税」を使います。相続税がかかる人はもちろん、そうでない人も110万円以下の贈与をコツコツ行う場合には、暦年課税を選びます。

相続税がかからない人が高額な贈与を受けるときは「相続時精算課税」を選択するといいでしょう。

なお、相続税がかかる人でも相続時精算課税を使うメリットがある場合もあります。

【関連記事】
贈与税とは
贈与税の計算方法(暦年課税・相続時精算課税)
贈与税がかからない場合(贈与税の非課税財産)
贈与税の申告手続と納付

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