不況の時は世界中が、好況の時は新興国が金を買う
2015年の半ば以降に、欧米経済が立ち直っていたとしたら、金価格は下がってしまうのでしょうか。「QE3が終了すれば、FRBは世の中にばらまいたドル紙幣を回収し、通常の状態に戻そうとするでしょう。そのときには金価格も落ち着くかもしれません。ですが、米国の経済が立ち直れば、米国にとって最大の貿易相手国である中国や、その他の新興国も再び高成長軌道に戻る。そうなれば、中国を始めとする新興国での金需要が伸びるでしょう」
経済が回復すれば、消費が伸びて、インフレが起きる可能性もあります。インフレが起きた場合、各国の中央銀行は利上げを行い、物価上昇のスピードを抑えようとします。一般的には、金利上昇局面では、利息を生まない金は、売られて価格が下がるといわれます。
「ところが、米国がITバブル崩壊後の景気後退から立ち直り、金利が上昇していく過程では、金は売られるどころか、インフレリスクを回避するために買われ、価格が上昇しました。今後も同様のことが起きる可能性があります。そこに豊かになった新興国の買いも加わるのです。金価格は、いったん調整することはあっても、再び上昇に向かうと考えるのが適切でしょう」(同)
お金の流れが止まるリスクがある時には金も売られる
とはいえ、金も売られる時があります。たとえば、リーマンショックの直後には、金が売られて価格が下がりました。また、2011年11~12月に財政状況が悪化しているスペイン、イタリア、ギリシャで政権交代が起きた時や、今年5月のギリシャ政権交代の際にも価格を下げています。「危機的状況にある国が破綻した場合、信用リスクが高まって、銀行間の資金融通ができなくなる可能性があります。そうなると世界中の金融システムが停止する、流動性危機が起きかねません。銀行口座からお金をおろせなくなったり、取り付け騒ぎが起きるなど、社会の隅々にまで影響が出るでしょう。それを恐れて、金融機関だけでなく、一般の人々も金を売って現金を用意しようとしたため、金価格が下落したのです」(同)
有事に強いとされる金であっても、流動性危機が心配される時には、売られることがあるのです。
次は金価格はどこまで上がる? 今から金にする意味は? です
監修/田嶋智太郎(経済評論家) 取材・文/大山弘子