「米ドル/円の買い」の意味は?
相場用語で、ロングは買い、ショートは売りを意味します。つまり「米ドルをロングで」といった場合は米ドルの買い、「米ドルをショートで」といった場合は米ドルの売りということになります。ところで為替の記事を読んでいると、次のような記述を目にすることがあります。
「米ドル/円を買った」。
この場合、米ドルを買ったのでしょうか、それとも円を買ったのでしょうか。為替の記事に慣れていない方の中には、この時点で「???」となる方も多いと思われます。
上記の記述の読み解き方にはルールがあります。買った(もしくは売った)という記述は、左側に表示されている通貨に対して掛かってくるのです。つまり、「米ドル/円を買った」というのは、円を売って、米ドルを買ったという意味になるのです。
これは他の通貨ペアにも当てはまります。たとえば「ユーロ/米ドル」を買ったという場合は、「米ドルを売ってユーロを買った」という意味になりますし、「ユーロ/米ドル」を売ったという場合は、「ユーロを売って米ドルを買った」という意味になります。
この記述は、為替相場に関連する記事などには当たり前のように用いられているので、まずはその読み解きかたをマスターしてしまいましょう。
売りに対するアレルギーを無くそう
ところで、FXのメリットは冒頭でも触れたように、外貨のロングだけでなく、ショートも出来るという点にあります。外貨預金、外貨建て債券、外貨MMFなどの外貨建て金融商品は、すべて外貨を買うことから取引が始まりますから、円安・外貨高にならないと為替差益を得ることができません。ということは、円高・外貨安が進むなかでは、逆に為替差損を被ります。しかも、「外貨を売る」という手段がありませんから、利益を得るチャンスも全くないということになります。
この点、FXは外貨のショートポジションを持つことができますから、その状態で円高・外貨安が進めば、為替差益を得ることができます。
しかし、意外なことに外貨のショートポジションを持つ人は、少ないものです。これは日本人の特徴なのかも知れませんが、自由に外貨のショートポジションが持てるはずなのに、多くの日本人トレーダーは、FXといえば外貨のロングポジションが中心です。なぜでしょうか。
理由はいろいろ考えられますが、第一に、かつて「ゼロ金利」状態だったのは、先進国のなかで日本くらいだったことが挙げられます。大半の国の金利が日本よりも高かったので、外貨のロングポジションを持っていれば、金利差によってスワップポイントが日々入ってきました。
しかし、それにもまして根本的な理由としては、株式投資の延長戦でFXを考えている人が多いことです。株式投資の場合、買いが基本であり、積極的に売りを仕掛けようという投資家は、完全に少数派です。
以上の点から、 日本の投資家は外貨のショートポジションを持つケースが少ないと考えられますが、FXの場合、株式投資のように売りを忌避する必要はありません。
株式投資の場合、確かに信用取引で売りから入ることもできますが、「企業の成長性をリターンとして得る」のが本筋なので、やはり基本は買いになります。
これに対し、通貨の場合はシーソーゲームですから、常に一方の通貨を買うだけでは、利益を得るチャンスも半減してしまいます。しかも、たとえば米ドル/円の取引で、ロングなら米ドルを買うことになりますが、ショートは米ドルを売るだけでなく、円を買うという行為になります。
つまり、一方を売るということは、もう一方を買うことになるので、必ずしも買いにこだわる必要はないのです。
しかも、最近は米国、ユーロの金利が大幅に下がって、日本と同じゼロ金利状態にあるため、かつてのように、米ドルやユーロをロングにしても、スワップポイントは微々たるものです。
FXでしっかり利益を稼ぐためには、まずショートを持つことに対するアレルギーを無くしてください。