落語家・柳家小三治師匠
■好きな理由、見所ポイント:柳家小三治師匠は紫綬褒章を受章し、現落語協会の会長です。次の「柳家小さん」の襲名はまちがいのないところでしょう。
リウマチという持病をお持ちで、高座でも白湯の代わりに漢方薬を置いて、他の落語家と比べてもしきりに飲んでいました。
まくら(ネタに入る前の余談)の小三治と言われるだけあって、まくらがとにかく長い。まくらだけで終わったといわれることもあり、後半の50分のうちまくらが40分、あとの10分で「小言念仏」を絶妙の語り口とゼスチャーで締めました。
そのまくらも客に媚びず、政治向きの話も思ったことをそのまま話すので、こちらが大丈夫かなと思うほどですし、師匠自身もこれが私の特徴ですと言う通り、それからそれへ話の枝が伸びて、元の幹に戻るのに「何の話でしたっけ」と客に聞くという、これも芸のうちなのでしょうが、だから長くなる。それでも客をつかんでいるからドッときます。並みの噺家だったら客が飽きます。
古今亭志ん朝が父親の志ん生に、「ん~」が多くて長すぎると言ったら、志ん生が『「ん~」と言っている間に客を引き付けているんだ。これができるのは長い経験と、年齢が行っていないとできねえ』と言ったといいますが、小三治師匠も「ん~」の多い人です。
私は昨年2011年、午後6時半から9時まで、小三治師匠をたっぷり2席を聞きましたが、前半のネタは「宿屋の富」。
「古典落語」(興津要 編)の噺とかなり変えています。まくらから引っ張ってきたネタの「馬喰町」からの入りは同じですが、サゲを「草履」から「下駄」に変えているんです。この部分は私の方が「ん~」でした。演題が知らされていないので、噺がネタに入ったところで頭の中の「古典落語」から噺を探し当て、私が思っていた人物描写と師匠の描写を比べて賛嘆しきりという楽しみ方が落語にはあるんですな。