こころ/夏目漱石 著
■おすすめの理由やエピソード:私の目線から先生を語るパートと、その私が先生と呼ぶ人物の長い長い手紙による告白文のパートとに分かれている構成が面白いです。浮世離れしている先生の人となりを綴っておいて、その理由が告白文により明らかになる、どこかミステリータッチでもあります。
夏目漱石を含め、過去のいわゆる文豪と呼ばれる方達の作品は何だか難しい事が書いてありそう、と敬遠していたのですが、その印象が変わりました。この作品も結局は恋の話です。一人の魅力的な女「お嬢さん」と二人の若い男「先生」とその親友の「K」。三人の男女の織り成す三角関係のお話です。
若さゆえ情熱的な気持ちを持て余してしまう、若さゆえの残酷さ。恋によって狂ってしまう恐ろしさ。苦悩する男たちに相反するように、おっとりとしたお嬢さん。男女の対比も興味深くおおよそ昔から人間というものは変わらないものだ、とそんな感想を持ちました。