吾輩は猫である/夏目漱石 著
■作品のあらすじ:「吾輩」である名前のない猫から観た、ごく狭い世間の人間模様を描いた作品。
■おすすめの理由やエピソード:
漱石というと「こころ」をあげる方が多いと思うのですが、あえて「吾輩は猫である」をオススメします。
どういうわけだったか、私が漱石を初めて読んだのが、この『吾輩は猫である』でした。小学生の頃でした。図書館で借りて読んだのです。正直なところ、小学生の自分には理解できない部分が多く、ただ「やたらと金田邸に忍び込むなあ」くらいにしか思わなかったのです。
中学生になってからか、高校生になってからか、もう1度チャレンジしてみたときに、ああそうかと感じたんですね。人間の、まあ汚いところとか、醜悪なところとか、嫌な部分ですよね、そういうのを好む傾向、思春期にあるじゃないですか?
猫は特別、それらに何かを言う訳じゃないけれど、第三者ではあるんですよね。
猫が最後、酒に酔って溺れ死ぬところが、妙にリアル……それは「死」という事象の有り様というか、現実であり(もちろんフィクションの中での話ですが)あるいは理想なのかな、と。猫がそこにこだわっていないというか、特別思い入れも何もないのが、今思い出すに、新鮮(と言ったら不謹慎?)ですね。
私個人は、ここまでのものを読まされてしまって(本作は漱石の処女作だそうです)もうその先には行けなかったんです。当然『坊っちゃん』『三四郎』等も手には取ってみたけれど、最後まで読めなかった。結局、門下生の芥川とかに行ってしまったんですが……。
そういう意味では、あるいは危険かもしれません。