田舎暮らし/田舎暮らし・スローライフ情報

日本は季節とコラボする…… 八月:雁来月

八月は和風月名で雁来月、秋風月、桂月、草津月など。涼やかな名をもっていますが、まだまだ暑い日が。田舎暮らしの「旬」を教えてくれるオモシロ歳時記「七十二候」が、季節の喜びに誘ってくれます。

堀江 康敬

執筆者:堀江 康敬

田舎暮らしガイド

七十二候。一年を五日ごとに分けることで、自然界の微妙な変化を感じ取れる暦。それぞれの季節にふさわしい名を付けて時候の移り変りを表しています。詩が、動物や植物が、旬の食べ物が、あなたを季節の喜びに誘ってくれます。

涼風至る(すずかぜいたる):8月8日~12日頃

画像はイメージです

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残暑は厳しいが、秋の気配が感じられるようになる頃。暑さも極まれば後は涼しくなるだけ。ひと吹きの涼風が一時、暑さを忘れさせてくれます。

涼風や袂にしめて寝入るまで(千代女)
下駄履いてすずしき河岸の往還(ゆきかえ)り(尾村馬人)

立秋/2012年は8月7日になります。毎年この時期になると、ニュースや天気予報で「暦の上では秋です」というフレーズを耳にしますね。でも実感としてはこの日から暑さは衰えるどころか、逆に気温は上がるって感じ。暑中見舞いは立秋の前日まで、この日からは残暑見舞いとなります。

一振りのセンターフライ夏終る(八木忠栄)
子らいまだ眠り立秋の空光る(高橋正子)

太刀魚(たちうお)/まずは刺身。昆布〆、塩焼き、あんかけ、ムニエル…… この時期が美味い!釣り上げたばかりの薄く長く銀色のメタリックな魚体は、正しく太刀を想わせます。立って泳ぎながら、自分の上を通る餌を待つことから立ち魚とも。英語でサーベルフィッシュ。

太刀魚を青磁の皿に夫婦かな(栗田正次郎)
ごぼう抜き太刀魚月へ釣りあげる(現代川柳・樋口舟遊)

寒蝉鳴く(ひぐらしなく):8月13日~17日頃

かなかなかな……、この声を耳にするともう夏も終わりかなぁと。暑かった一日の夕暮れ時に、涼をもたらす音響効果です。夕刻鳴くことが多いため「晩蝉」とも表します。

蜩や静かに暮るる雲の色(今井伊佐夫)
蜩といふ名の裏山をいつも持つ(安東次男)

画像はイメージです

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盆休み(ぼんやすみ)/お盆は祖先を祭る大切な行事であり、同時に我ら庶民が大手を振って休める祭りの日。でも遊んでばっかりじゃいけません。ここでご先祖様に感謝を込めて、現代風お盆スタイルを。

12日に精霊棚を設けるか仏壇の前に飾り物をして、夕方には迎え火を焚く。
14日に芋茎和え、茄とふくべとごま和え等を供える。
15日には地方によりけりですが、蓮の葉に白いご飯を包むか米団子を供える。瓜や茄の牛馬を供えるのも一般的。
そして、15日か16日に送り火を焚いて、精霊をお送りします。

盆踊ピッチャーマウンドに櫓建て(渡辺善夫)
盆三日あまり短かし帰る刻(角川源義)

蜉蝣(かげろう)/か弱く細長い体長10~15ミリのカゲロウ目の昆虫。淡水中で一年以上を過ごし、羽化し、脱皮して成虫になります。成虫の寿命は数時間から一週間ぐらいで、短命ではかないものの喩えにされますね。蜉蝣の大量発生の年は洪水のない年と重なることから、豊作を期待できるとして「豊作虫」と呼ぶ地域もあるとか。

病室にともす早い灯へ蜉蝣の命透けている(平田栄一)
蜉蝣に黄昏せまるときかなし(山本薊花)

蒙き霧まとう(ふかききりまとう):8月18日~22日頃

濃い霧がまとわりつくように立ちこめる時候になります。春の霞、秋の霧、時節の変わり目の到来。さて、霧(きり)・靄(もや)・霞(かすみ)の違いを知ってました? 気象学では、視界が1キロメートル以下を霧と呼び、それ以上のものを靄と呼ぶことになっているとか。それでは霞とは? 薄い煙のようなものが、棚引いている様子を指すそうです。

ひんがしに霧の巨人がよこたわる(夏石番矢)
有明や浅間の霧が膳をはふ(小林一茶)

秋の虫/縁側や庭で月を眺め、虫の声を味わいながら夏の終わりと秋の気配を知る…… これぞニッポンの風情。ところで鈴虫の鳴き声は、心的外傷後ストレス障害の治療にも効果があるという報告があるそうですぞ。♪リ~ンリ~ンリ~ン

鈴虫にも西瓜わけてやる宵の空(糸井小市月)
行水の捨てどころなし虫の声(上島鬼貫)

画像はイメージです

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萩(はぎ)/夏から秋にかけて、赤紫色(まれに白色)の蝶の形の美しい花をつけます。萩の字は、秋に花が咲くという意味から日本で作られた漢字。秋の七草の筆頭に上げられ、桜などと並び古くから日本人に愛された花の一つですね。

一家に遊女もねたり萩と月(芭蕉)
萩の風何か急(せ)かるゝ何ならむ(水原秋櫻子)

綿の柎開く(わたのはなしべひらく):8月23日~27日頃

柎(はなしべ)とは花の萼(ガク)のことで、綿を包む萼が開き始める時節です。綿は盛夏に萼がはじけ、晩秋に収穫します。日本に綿が入ってきたのは、延暦18年幡豆郡天竺村(今の愛知県西尾市)に漂着した、崑崙(コンロン)人によってとか。

浪音も静かに暑し綿の花(高浜虚子)
綿の実の裂けて白きがふんわりと(岩崎楽典)

桔梗(ききょう)/青紫色の可憐だが凛とした姿が、野山に見かけられる季節。多年草で、日本の他に中国から東シベリアまでの東アジアに分布しています。根は薬草として用いられ、現代医学ではエキスが去痰剤として、また漢方では鎮痛剤として用いられているとか。

桔梗の花咲く時ぽんと言ひそうな(加賀千代女)
桔梗よ我が暗澹をぬぐえぬぐえ(田中空音)

赤蜻蛉(あかとんぼ)/赤とんぼが稲穂の上を群れ飛ぶ様子は、日本の田舎の典型的な風景ですね。畦や用水路がコンクリート化され溜め池は埋め立てられ、蜻蛉が生息できる場所がだんだん少なくなってきているのが残念。

小春日や石を噛み居る赤蜻蛉(村上鬼城)
蜻蛉生るかなしき翅をひろげつつ(柏崎夢香)

次回は、九月:木染月。お楽しみに!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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