都内でうれしい、扱いやすいほどよい大きさ
都内を転がしていると、やっぱり、これくらいが扱いにほどよい大きさで嬉しくなってくる。港区あたりだと、Q5はもちろん、Q7とも信号待ちで並んだりするけれども、車格に“負けた”という思いは不思議とわかない。むしろ、“ご苦労さんですね”と、相手の余分な大きさを気遣ってやりたくなる。そういうクレバーさが、小さな輸入車の魅力だ。
内外装の仕上げ質感は、もちろんモダンアウディ仕立てだからハイレベル。これと言ってケチをつける必要もなければ、そんな気にもならない。評判のアウディを買った、という満足感にじゅうぶん浸れる。
パフォーマンスは十二分、アウディらしさは……
それよりも、気になったのが、走りの質感の方だった。
パフォーマンスそのものは、十二分である。2リッター直噴ターボエンジンの“力”は頼もしく、それを7速のSトロニックが軽妙かつスムースに引っ張ってゆく。そこまではいい。
けれども、ライドフィール全体に、アウディらしい上質さは希薄だ。パワートレイン以外、どこをどう転がしても、フォルクスワーゲン風味から逃れられていない。同じグループなんだし、といってしまえばそれまでだけれども、そこの味つけを上手に変えてきたのがグループ戦略の要諦だった。
高いクルマほど、乗り味を変えやすいのだ。逆に、安いクルマでは、走りのクオリティよりも、見栄えの盛りが優先された。その結果、アウディらしい走りの煮詰めが甘くなってしまったのだろうか。
否、むしろ、VW各車のライドフィールが、あがってきたから、そう思ってしまうのかも知れない。それゆえ、予算のあまり掛けられないクラスほど、そのライドテイストの差がなくなり、結果的に似た者同士になってしまう。
このことは、プレミアムブランドを抱えるビッグメーカーにとって、モジューラー戦略を推し進めるうえで、最も大きな課題のひとつとなるかも知れない。そう、同じ過給器付きエンジンなのにECUのマッピング違いだけでどうしてこんなに値段が違ってくるの? というエンジンダウンサイジング戦略と同様に……。