ORE(オール)(550円)
こちらは、2008年WPTC出場時に、味覚を担当された和泉シェフが考案したプティガトー。バニラ風味のアプリコットのソテーに、アプリコットとパッションのクレーム、ヘーゼルナッツプラリネクリームを重ね、一番上にはアプリコットのジュレ。飾りに焼き目をつけたアプリコットとカリカリしたヘーゼルナッツの糖衣がけ。土台はダコワーズ・ショコラと細かく刻んだナッツのザクザク食感。この4年の間に、少しずつ進化を遂げているケーキですが、アプリコットの風味が濃厚になり、より美味しさが増しています。
和泉シェフは、ピューレを使う際も「杏のお菓子だからアプリコットピューレだけ」「苺のお菓子だから苺ピューレだけ」といった使い方ではなく、アプリコットにパッションを加えたり、苺にフランボワーズを加えたりといった使い方をされることが多いのですが、そうすることで味にも奥行きが表現できるのですね。
このような和泉シェフのスペシャリテのオリジナルケーキは、その日によって登場するものが異なり、日々入れ替わるそう。引き出しの豊富な和泉シェフらしいスタイルですね。
プリン
定番アイテムとして並ぶカップ入りのプリンは全4種類。「プレーン」(250円)と、「チーズ」「イチゴ」(各280円)があり、「生チョコプリン」も登場予定だそう。「昔ながらのプリン」を思わせるプレーンは、北海道産の低温殺菌牛乳が主体でほんの少しだけ低脂肪の生クリームをプラス。卵の素朴な味わいとカラメルの程良いほろ苦さが、ほっとさせてくれる味です。珍しいのは、「イチゴ」と「チーズ」。パステルピンクが愛らしい「イチゴプリン」は、一見すると、苺のムースかババロアかと思いきや、食べてみるとちゃんと「苺の味のプリン」なのです。底にはフレッシュの苺の形も残ったコンフィチュールがソースとして隠れています。その味と食感は、ぜひ、実際にお試しあれ!
「チーズ」は北海道産マスカルポーネのやさしい風味にクリームチーズのリッチさ、バニラビーンズが加わった奥行きのある味を、カラメルソースが引き締めています。
差し入れや手土産にするにも、4種類を取り交ぜて買えば、選んでもらう楽しみもあっていいですね。
オペラ・デ・テ(550円)
「オペラ・デ・テ」とは、「夏のオペラ」という意味。クラシックな「オペラ」は、ジョコンド生地にたっぷりコーヒーシロップを打ってコーヒーのバタークリーム、チョコレートガナッシュを層に重ねたものですよね。和泉シェフはこの古典菓子を原点として、バタークリームの代わりにジャスミンの香りのホワイトチョコレートのムース、ガナッシュの代わりにアプリコットのコンポートを挟み、夏らしいさわやかなオペラにアレンジされました。表面は生クリームでデコレーション。白とオレンジ色で見た目もさわやかです。生地にはパッションピューレ入りシロップを打ち、爽やかな酸味がさらに加わっています。
それにしても、数々の世界コンクールに出場された和泉シェフのお菓子は、かなり複雑で凝ったものだろうと構えていくと、シンプルでなじみやすいお菓子、また、可愛らしいお菓子が多いことを意外に思うかも知れません。
「スリジエ」の頃は、フランス菓子の老舗らしいお菓子を作っていらした和泉シェフですが、これからはジャンルに縛られることなく、自由な発想で、和泉シェフがお客様に食べていただきたいお菓子を出していきたいとのこと。
たとえば、シフォンケーキもその一つ。「ふわふわシフォン」(450円)は、やや小ぶりの2人分ホールケーキ程度の大きさなので、気軽に買いやすいのが嬉しいサイズ。生地はバニラ風味でしっとりふわっと軽いので、1人でぺろりと食べきってしまいそうです。
生地に生クリームを巻いただけの「上原ロール」(1400円)というシンプル勝負のロールケーキも登場します。
そして、やはりお菓子屋さんに無くてはならないのがショートケーキ。プティガトーでは、四角い形の「ガトーフレーズ」(420円)という名前で登場。ホールケーキは丸い形となります。苺は、今のところ「とちおとめ」を使用。スポンジ生地の配合を見直され、はちみつを使った口どけのよい生地にしたそうです。
他にも、これまた人気の高い「モンブラン」には、和泉シェフの故郷である愛媛県産の和栗を使用されます。開店準備期間中に愛媛の生産者を訪れ、実際にご自分の目で生育状況を確かめて自信を持って選んだ素材です。
このように、定番アイテムの一つ一つにも、シェフの細やかなこだわりが表れています。
その一方で、「フォレノワール」(420円)のようなベーシックなフランス菓子のアイテムも見逃せません。クラシックなスタイルの中で、サンドするチェリーは、2種類のダークチェリーをローリエとキルシュでコンポートしたものといった、和泉シェフ独自の工夫が凝らされています。表面の仕上げが、削りチョコをのせる伝統的な形から、チョコレートの生クリームとココアパウダーで覆われた姿に変化することも。ぐっと印象が変わります。
次のページでは、焼き菓子へのこだわり、さらにデザインやお店の内装の見所についてもご紹介します。