有事のスイスフラン買い
スイスは永世中立国であると同時に、金融立国でもあります。スイスの銀行は高い秘匿性で知られているため、世界中から富裕層のお金や、あまり表に出したくない、いわくつきのお金などが集まっています。それが犯罪の温床になるということで、国際社会からは批判されていますが、もし、高い秘匿性が無くなれば、その時点でスイスフランは暴落する恐れがあります。そのため、スイスはユーロに参加することもなく、孤高の存在を維持し続けているのです。こうした独特の体制を持っていることから、スイスフランは逃避通貨のひとつとして、世界的な混乱が生じた場合など、常に注目され、買われる傾向が見られます。
かつては「有事のドル買い」と言われ、紛争などが生じた時には米ドルが真っ先に買われたものですが、2001年9月11日、米国が直接テロの攻撃にさらされて以来、有事のドル買いは過去のものになり、代わりにスイスフランがその役目を一身に背負うようになりました。
ユーロに連動
基本的にスイスフランは、ユーロに対して高い連動性を持っています。つまり、米ドルに対してユーロが売られる時は、スイスフランも米ドルに対して売られる傾向が見られるのです。確かにスイスは、通貨ユーロに対して一定の距離を置いてはいますが、スイスの貿易相手はユーロ圏をはじめとする欧州が中心ですから、欧州経済とスイス経済は高い関連性を持っています。そのため、ユーロとスイスフランは、対米ドルで見た場合、連動しやすいのです。
ただ、欧州債務危機が生じた時は、ユーロを売ってスイスフランを買うという動きが活発になりました。
スイスフラン高が進むと、スイスの輸出産業はダメージを受けてしまいます。そのため、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行は、昨年9月、それまで急激に進んだユーロ安・スイスフラン高に歯止めをかけるため、1ユーロ=1.20スイスフランを下限として、積極的にスイスフラン売りの介入を実施することを発表しました。