「夏と花火と私の死体」
「夏と花火と私の死体」は、花火大会を控えたとある村で死んでしまった一人の少女、私。私の死体はどうなってしまうのか? その行く末を死体となった私の目線で綴るという斬新な作品です。死体となった私が客観的に自分の死体を見ている描写が面白いです。少女の素直さというか無邪気さは残したままなのに、どこか冷静にも見つめている感じです。
また、情景や子供たちの描写が丁寧で、田んぼや石垣がありありと浮かんできます。子供ならではの無垢さゆえの残酷さという心情も良く伝わってきます。
そうして私が行き着いた先、意外なようで実は予感していたかのような場所。これまでの描写の中に伏線が張られていたと気づきます。ストンと心地よい着地点を得たような読後感がありました。