メルセデス・ベンツ/メルセデス・ベンツの車種情報・試乗レポート

成熟した大人の上等な嗜み、SLは「あがりの1台」(3ページ目)

6世代目となるM・ベンツの2シーターオープン、SLクラスにスペインで試乗。スポーツカーであり、オープンカーであると同時に、実用車としての“たおやかさ”もあって…。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

助手席との大きな違い“音”

M・ベンツSLクラス

SL550には走行状況などに応じてサスペンションを制御するABC(アクティブ・ボディ・コントロール)を装着。旋回時などのロールを60%以上低減させるという。また高速走行時には車高を13mmまで下げ、悪路などではスイッチ1つで50mm上げることも可能

ステアリングホイールを握る番だ。あらめてコクピットを眺めてみれば、見栄えクォリティのレベルがずいぶん上がったことにまずは感心。SLSと同じデザインモチーフだが、さらに豪華にした印象。ステアリングホイールやシフトベースあたりのディテール質感がとても高い。ショルダー部などは広がったはずの空間も、適度にタイト。スポーツカーに乗るぞ! という盛り上がった気分になる。

走り出してすぐ、助手席との大きな違いに気がついた。それは、音。エンジンサウンドをはじめ、メカニカルな息吹がしっかりと、嫌味なくドライバーに伝わってくる。クルマという機械との連帯感を、音で感じることができる。

音の繋がりがあるとはいえ、いやだからこそかも知れないが、運転席の乗り心地も、やはり極上だった。クルージング状態では、猫が喉をならすようなエンジンフィールがたまらなく心地いい。右足親指に軽く力を加えれば、すーっと車速が上がってゆく。余裕のかたまり、これぞ金持ち喧嘩せず、だ。

流れるように走らせるのがSLの正解

M・ベンツSLクラス

パドルシフトを備えた7AT(7G-TRONIC PLUS)を搭載、アイドリングクトップ機構も備えている

ほどよく曲がりくねった山岳路に出た。クォーンとあくまでも控えめなV8サウンドをたな引かせて、ひらりひらり、まるでSLKクラスのような軽やかさだ。その舞にはアルミボディに特有の乾いた力みなどいっさいなく、とても、しっとり。そして、動きがとても、リズミカル。

さまざまな電子制御システムを備えている。メルセデス自慢の品々。なかでも、ABC=アクティブ・ボディ・コントロールの完成度はとても高くて、不自然なフラットライドフィールがみじんも感じられない。すべて、ドライバーの仕業であるように思わせてくれる。運転が上手くなった気分、とはこのことだ。

とはいえ、調子にのってコーナーへつっこみ、ムリヤリねじふせるような走り方をすると、トルクベクタリングブレーキをはじめとする走りの電子制御がたちまち積極的に介入する。厳しいお説教には至らないもの、“それ以上はダメだよ、このヘタクソ! ”と躾けられている気分には十分に、なる。

なるほど、ぜったいムリをせず、リズムをちゃんと保ったまま、流れるように走らせる乗り方が、SL550の正解、というわけだった。

一流のスポーツカーであると同時に、2シーターの実用車でもあるSLクラス。極上のドライブ&ライドフィールをもつ、成熟した大人の上等な嗜み。それこそが、300SLから連綿と引き継がれてきた“SL-DNA”なのだった。
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