助手席との大きな違い“音”
SL550には走行状況などに応じてサスペンションを制御するABC(アクティブ・ボディ・コントロール)を装着。旋回時などのロールを60%以上低減させるという。また高速走行時には車高を13mmまで下げ、悪路などではスイッチ1つで50mm上げることも可能
走り出してすぐ、助手席との大きな違いに気がついた。それは、音。エンジンサウンドをはじめ、メカニカルな息吹がしっかりと、嫌味なくドライバーに伝わってくる。クルマという機械との連帯感を、音で感じることができる。
音の繋がりがあるとはいえ、いやだからこそかも知れないが、運転席の乗り心地も、やはり極上だった。クルージング状態では、猫が喉をならすようなエンジンフィールがたまらなく心地いい。右足親指に軽く力を加えれば、すーっと車速が上がってゆく。余裕のかたまり、これぞ金持ち喧嘩せず、だ。
流れるように走らせるのがSLの正解
ほどよく曲がりくねった山岳路に出た。クォーンとあくまでも控えめなV8サウンドをたな引かせて、ひらりひらり、まるでSLKクラスのような軽やかさだ。その舞にはアルミボディに特有の乾いた力みなどいっさいなく、とても、しっとり。そして、動きがとても、リズミカル。さまざまな電子制御システムを備えている。メルセデス自慢の品々。なかでも、ABC=アクティブ・ボディ・コントロールの完成度はとても高くて、不自然なフラットライドフィールがみじんも感じられない。すべて、ドライバーの仕業であるように思わせてくれる。運転が上手くなった気分、とはこのことだ。
とはいえ、調子にのってコーナーへつっこみ、ムリヤリねじふせるような走り方をすると、トルクベクタリングブレーキをはじめとする走りの電子制御がたちまち積極的に介入する。厳しいお説教には至らないもの、“それ以上はダメだよ、このヘタクソ! ”と躾けられている気分には十分に、なる。
なるほど、ぜったいムリをせず、リズムをちゃんと保ったまま、流れるように走らせる乗り方が、SL550の正解、というわけだった。
一流のスポーツカーであると同時に、2シーターの実用車でもあるSLクラス。極上のドライブ&ライドフィールをもつ、成熟した大人の上等な嗜み。それこそが、300SLから連綿と引き継がれてきた“SL-DNA”なのだった。