どうして親はお金のことを教えてくれなかったのかな?
日本では学校教育の中で金銭教育を受ける機会が少なく、社会人になって初めて税金の事、年金の事、家計管理、運用を実践しながら学ばなくてはいけません。子どもの頃からいろいろなお金の話を聞いておきたかったという人は多い。
FPとして相談を受ける中にも、
「年金、25年納めなきゃいけないって、どっかで習いました?」
「親は投資をしていたのに、どうして教えてくれなかったんだろう?」
「みんなどこで勉強してるの、税金とか老後いくらいるかとかのことを?」
こういう声をよく聞きます。
私も、『貯金は美徳』と教えられ、両親の言動から『もったいないスピリット』を受け継いだ以外は全くお金の事を教えられた覚えがありません。「もっと早くお金の事を知りたかった」と多くの大人が思う一方、自分の子にどうやってお金の話を伝えればいいのか、自分達もわからないのです。
お金の話をするきっかけはいつでもある
右肩上がりの時代は、「お金のことは心配しなくていい、勉強しなさい」と言われていましたから本当に心配しなくてもよかったかもしれません。でも今後は、お金の有無にかかわらず、子どもが社会との結びつきを理解する上で、お金の知識は不可欠です。その一番わかりやすい入り口が、お家のお金=『家計』なのです。例えば、住んでいるお家ひとつとってもいろいろな事が学べます。当時5歳の息子が「この家は、だれの家?」と聞いてきた時に、これはいい機会だからと思って「銀行のお家だよ」と答えました。銀行に毎月お金を払っていること、そのお金は、お父さんとお母さんが働いて払う事、もし払えなくなった時はお家を出ていくこともあること。そうならないためにお金を貯めている事、銀行にお金を全部払うと、お父さんとお母さんのお家になる事を話しました。
もう少し大きな子どもなら、銀行はお金を集めてお金が必要な人に貸している事、返す時にお金を増やして返すことを話すのもいいでしょう。これは、金融知識がなくても話せます。
4月の入学、進級シーズンは子どもに教育費の話をする絶好のチャンスです。塾やおけいこごとのお金が1年間でいくらになるのか一緒に計算して「こんなにお金がかかるんだから、一生懸命勉強しなさい!」と言いたいところですが、「あなたを応援しているから、お父さんはがんばってお仕事しているんだよ」という言葉をかけたいですね。
貯蓄や節約ではなく、「お金を使うこと」がゴールだと教える
大人も時々勘違いをしますが、お金は節約や貯める事がゴールではなく、使う事がゴールです。「お金がないから貯めなきゃ」という言葉は『貯める』がゴールになっています。漠然としたゴールでは貯めていて楽しくありませんし、目標額を達成しても、使わなければ何も生活は変わりません。いざという時のためにお金を貯める事は大切だと教える事は大切ですが、それだけだと子どもは「お金使えない症候群」になってしまいます。お年玉でもらったお金、入学祝、結婚祝などのお金が40歳を過ぎても手つかずで使えない、いつ「いざという時」はくるのでしょう?という人もいるのです。
お金は貯めるよりも、使う方が難しいという人もいます。貯めるのは、使うのを我慢すれば貯まりますが、使うのは使い方を選ばなくてはいけません。せっかく貯めたお金だから1円たりとも損したくないと思う気持ちが強すぎると、失敗を恐れるあまり、何日も比較サイトを眺めて結局使えなくなってしまいます。使うために貯めるのだから、使った後は一時的にお金が減ってもいいこと、毎回底値で買い物が出来るわけではないこと、お金を使わないことは何かが得られるチャンスを逃していることも、子どもに話しておきましょう。
お金を取っておく、ということを教えるには?
細かい数字を子どもに伝える必要はありません。将来使うために貯めるお金と、毎日使うお金あり、今使うと将来使うお金がなくなり、将来のために取っておくと今使えるお金がなくなることを話します。いずれにせよ、いつか使うのです。今か将来かです。そのために、大事なお金を他の事に使ってしまうと、今も将来も使えなくなります。これは出来るだけ、小さいうちからやさしく話しておきましょう。お菓子をねだられたら「いいよ。買おうね。でも、お家のバスケットの中にいっぱいまだあるから、あれが無くなったらこれ買おう!○○ちゃん、このお菓子覚えておいてね!」お菓子はだだをこねられるより、100円程度なので買った方が早いのですが、お菓子が、おもちゃになり、ゲームになり、服になり、おこづかいになります。
お金の先生はFPではなく身内の経験者
お金の事は、経験者の話を聞けば本を読むよりよく理解できます。例えば、老後のお金の話は、おじいちゃん、おばあちゃんの方が詳しいのです。いつから年金をもらったとか、遅くもらい始めた方が得だとか損だとか、親戚の○○さんは企業年金がたくさんあるらしいとか、ご近所の△△さんは遺族年金があるらしいとか、医療費の負担が大変だとか。介護施設に入った××さんは、一時金が何千万もしたらしいなどなど。そんな話を子どもと一緒に一度でも聞いておくと、「ネンキン」とか、「カイゴ」とかそういう物があるんだなとイメージしやすくなります。
また、病気になったときのお金やお葬式のお金も、保険会社のデータより身内の話なら説得力があります。お金の話はタブーという風潮がありますから、聞きにくいのですが、身内やお話し好きの親しい友達なら、よくぞ聞いてくれました!とばかりに話す人も少なくありません。家庭内で折に触れ、お金の話をしておく事が将来起こるライフイベントやイザというときになんだかお金がかかるらしい、そのために親はお金を貯めているらしいということが分かります。