鉄道/SL

ローカル線の魅力満載、「SLもおか」の旅(2ページ目)

茨城県の下館と栃木県の茂木を結ぶ真岡鉄道は「SLもおか」が走ることで知られる。年間を通じてSL列車が走る路線は他にもあるが、「SLもおか」は、冬季も走ること、架線の張られていない非電化単線のローカル線を走ることが特徴だ。本来の汽車が走る自然な情景が展開される点において貴重な鉄道でもある。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

メインはC12形牽引

真岡鉄道は、蒸気機関車を2両保有している。

■C12形66号機
C12

真岡鉄道の主役C12形

現役引退後、福島県川俣町で静態保存されていたものを復元。1994(平成6)年より真岡鉄道で運行を開始した。1999年にNHK朝の連続ドラマ『すずらん』出演のため、北海道の留萌本線で走行したことがある。「SLもおか」のメインとなる牽引機として活躍中だ。

なお、C12形は、大井川鉄道にも在籍しているが、目下休車中なので、わが国で走行できるのは、この66号機だけという貴重な存在である。

■C11形325号機
C11

2台目のSLとして登場したC11形

現役引退後、新潟県北部の水原町(現・阿賀野市)で静態保存されていたものを譲り受け、1998年より運行している。C12形66号機と連結して重連運転のイベントを行ったり、単独で真岡鉄道を走ることもあるが、JR東日本に貸し出されイベント運転に活躍する。

C11形蒸気機関車は、他には大井川鉄道には2両、JR北海道には2両、いずれも動態保存されている。

50系客車と車内の様子

50系客車

「SLもおか」に使われる50系客車

50系車内

50系客車の車内

「SLもおか」の機関車は3両の客車を牽引する。この客車は、旧国鉄時代の1977年に登場し、地方都市圏の通勤通学輸送に活躍した。赤く塗られていたので、「レッド・トレイン」の愛称を持っていた。国鉄の蒸気機関車が現役を引退したのは1975年のことだったから、この客車をSLが定期列車として牽引した実績はない。旧型客車は自動ドアではなかったので、安全上の理由からこの客車がJRより譲渡された。

往年の「汽車」の雰囲気を持たせるため、真岡鉄道を走るにあたって、茶色に塗り変えられ、窓下には帯が付けられた(当初は白だったが、現在は赤帯)。屋根にクーラーがないので、SLに牽引されて走る姿に違和感は少ない。冬期は蒸気暖房が使われるのも貴重だ(他には大井川鉄道のSL列車があるのみ)。

ディーゼル機関車

回送はディーゼル機関車牽引だが、この光景も今では珍しい

また、SL列車が下館に戻った後、真岡まではDE10形ディーゼル機関車に牽引されて旅客列車として走る。ディーゼル機関車に牽引されるローカル列車も、現在ほとんど存在しないので、これも希少価値のある列車だ。

車内は、ドア付近にロングシートがあるものの、ほとんどは4人向かい合わせのクロスシート(ボックス席)で、これは現役時代のままである。50系客車は、JR九州の「SL人吉」、JR北海道の「ノロッコ号」でも使われているが、いずれも改造されているので、原型のまま3両連なって走るのは「SLもおか」だけだ。
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