ローカル線の魅力満載、「SLもおか」の旅
茨城県西部の下館から栃木県の真岡、益子を経て茂木(もてぎ)に至る全長41.9kmの第三セクター真岡鉄道。定期的にSL列車が走ることで知られている。D51形、C57形といった大型蒸気機関車ではなく、C12形、C11形という小ぶりな蒸気機関車であるものの、迫力の点ではさすがSLだ。とくに冬場は煙を盛大に吐いて力走する。首都圏に近いところでは、秩父鉄道、JR上越線、信越本線(高崎~横川)のSL運転が有名だが、いずれも架線の張られた電化区間を走る。C11形が主力として活躍する静岡県の大井川鉄道も電化区間であることを考えると、架線のない非電化区間の真岡鉄道は、全線単線でもあり、古き良き時代のローカル線の雰囲気に満ちている。撮影派にとっても、架線のないシチュエーションは、イベントであることを忘れさせる自然体のSL走行シーンとして満足のいくものとなろう。
「SLもおか」の運行形態
土曜日と日曜日、祝日に年間を通じて運行される。イベントとしてのSL定期運行の場合、春から秋にかけて走り、冬期は機関車整備などのため原則運休となる路線が多いが(山口線、磐越西線、秩父鉄道、肥薩線)、真岡鉄道では、冬季も週末に運転される。気温が低いと煙が盛大にでて迫力あるシーンが見られるので、ファンにとっては嬉しい。運転区間は、下館~茂木間で、午前に下館から茂木へ向かい、午後に茂木から下館に戻る。片道約1時間半の旅で、1日1往復だ。
「SLもおか」の旅
下館を出ると、しばらくは関東平野の真ん中をのどかに走る。線路際は田畑が多い。ときにはお地蔵さんの脇を過ぎ、南東方向に筑波山の姿が見えることもある。SLの形をしたユニークな巨大な駅舎が目立つ沿線最大の街・真岡で小休止。乗客の多くはホームに下りて、SLをバックに記念写真を撮ったり、機関車を眺めたりして時間を過ごす。時には、ホームや車内に地元のふるさと大使として人気の「寅さんのそっくりさん」が登場するのは楽しい。
北真岡駅を過ぎると、桜並木に沿って走る。4月上旬には満開の桜と線路際の菜の花のコラボが見事で、大勢のカメラマンが殺到する撮影名所となる。
陶芸の里・益子を過ぎると、山深くなり、真岡鉄道随一の難所にさしかかる。SL列車はあえぎながら勾配を上る。天矢場を通過すれば、下りとなり、大勢の観光客が手を振る「道の家もてぎ」の脇を駆け抜けて終点茂木駅に到着する。