波瀾万丈な成功者 マダム・タッソー
ところで施設の名前にもなっているマダム・タッソーとは、一体どんな人物なのか。実はドラマチックなエピソードが満載の、スゴ腕ビジネスウーマンなのです。1761年にフランスで生まれたマリー・タッソーは、家政婦だった母親の雇い主である蝋細工師に見いだされ、6歳から細工の指導を受けました。みるみる間に才能を開花させたマリーは、やがてルイ16世とマリー・アントワネットが住んでいたヴェルサイユ宮殿に招かれ、そこで王の妹の家庭教師として9年間を過ごします。しかしフランス革命で、王家とつながりの深かった彼女は投獄。頭髪も剃られ、あわやギロチンの露と消えるか……というその直前、「断頭台で処刑された人の頭部を集めて、デスマスクを作る」という仕事を引き受ける代わりに助けられ、生きながらえることができたのだそうです。マリーの手によって作られたルイ16世とマリー・アントワネットのデスマスクは、現在も残っています。
その後結婚し、子どもにも恵まれますが、夫とフランスに別れを告げて拠点を英国に。そして30年以上にわたり、等身大フィギュア展をしながら英国を巡回。ロイヤルファミリーから犯罪者まで、ありとあらゆる有名人と会えるとあって評判になり、展覧会は大成功を収めます。「開催期間が1週間短くなりました」といっては来場者を集め、結局「人気ゆえ会期延長」と予定通りの期間展示を行うなど、マリーは相当やり手のビジネスウーマンだったよう。そして彼女が生み出した彫刻技術のレベルは高く、そのテクニックは今もマダム・タッソーの技術者たちに受け継がれているのだそうです。
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