ランボルギーニ/アヴェンタドール

エンツォ以来の衝撃、新世代のアヴェンタドール(3ページ目)

10年に一度のフルモデルチェンジを果たしたレイジングブルのフラッグシップ、ランボルギーニアヴェンタドール。おおげさに言うと50年ぶりとなる100%新設計のミドシップ2シーターだ。700psのV12エンジンもさることながら、軽量で強固なカーボン繊維強化樹脂のモノコックボディ&キャビンを採用するなど話題は尽きない。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

ウルトラスーパーカーの世界観がレギュラーモデルに降りてきた

ランボルギーニアヴェンタドール

オプションで透明なエンジンフードなどを用意、13色を用意するエクステリアカラーやインテリアカラーなどは、カスタマイゼーション・プログラムによりオーナーの好みに合わせ自由に選ぶことも可能

それから2ヶ月後、ボクはサンタガータ・ボロネーゼのランボルギーニ本社に向かった。アヴェンタドールの実力を、公道で試したいと思ったからだ。

サンタアガータの街中ではアスファルトは荒れ気味で、中心部に入れば言わずと知れた石畳、スーパーカーには殊のほかツラい路面環境なはずだったが、これがオールカーボンファイバーボディのテイストというわけだろう、硬いが不快な突き上げはまるでなく、路面の凹凸を軽妙にいなしている。乗り心地がいい、というよりも、乗り小気味がいい。ムルシエラゴ以前はおろか、ガヤルドにもないライドフィールで、もうこの段階で最高の公道インプレッション記事が書けるとほくそ笑んだほど。

撮影場所となった広場への進入では、路駐のクルマに邪魔されて、これがムルシエラゴだったなら、かなり逡巡、というか、別の場所に変えてくれと叫んではずだが……。ノーズを自動でリフトアップし、方向転換も素早く、すいすい狭い入り口を抜けて行く。後から見れば、ほとんど車幅と変わらないスペースで、かなりヒヤリとしたが、車両感覚を不必要なまでに増大させない、そのリニアな感覚こそ、カーボンボディが醸し出す一体感の妙かも知れない。

ランボルギーニアヴェンタドール

走行条件に合わせてストラーダ(ストリート)、スポーツ、コルサ(サーキット)の3つが選択できるドライブセレクト・モードシステムを搭載。エンジン、トランスミッション、ステアリング、ダイナミックコントロールなどの特性を切り替えることができる

塔の前での撮影を終え、今度はワインディングを目指す。地元民が先導して、よく知るランボを走らせようというのだから、日本でいえば箱根ターンパイクのような快適なワインディングロードを想像していたのだが……。

これがとんでもない道で、日本なら単なる農道といった風情。対向車とのすれ違いはギリギリで、場所によっては不可、左右はなだらかに畑へと落ち込む。

ええ? こんなところで走りの撮影までするの? と訝しみながらも、けっこうなアベレージスピードで山間へと分け入っていく。当初は、そのあまりの狭さと、中途半端な交通量に辟易したのだが、途中から妙なことに気がついた。

見知らぬ狭い道で平均速度が上がってきたにも関わらず、反比例するように運転を楽しんでいる自分がいる!

もうほとんど、狭い道を走るがゆえのスーパーカーに対する気遣い、ケアなどすっかり忘れてしまったかのように、狭いコーナーを駆け抜け、狭いストレートでは全開を試みていた。

公道で試す700psのフィーリングは、広いサーキットのそれをさらに倍にしたようなもので、ジュワッと手に汗が滲んでくるけれども、クルマそのもののコントロール性が優れていて、まったく不安にならない。リスクへの心配の少なさがスリルな感覚を減じさせ、ひいては従前のスーパーカーらしい楽しさに欠ける、ということも言えなくもないが、それを上回って一体感が楽しめる。ほとんどサーキットと同じ、否、それ以上に、喜々としてLP700-4をドライブする自分に気がついて、驚いた。

フルスロットル時のサウンドも、サーキット上で聞くより豪快だ。足の裏へと収束するような質の音で、ドライバーを大いに震い立たせる。走り出してしまえば、余計なノイズや振動がきっちり取り除かれており、純粋にパワートレインの音だけを楽しめ、静かだと感じる場面さえあった。

必要のない音が聞こえないと言えば、現猛牛オーナーは驚くだろうか。電光石火のISRミッションのさばきも、“音”として楽しめる。

思い返せば、ウルトラスーパーカーの世界に、馬力×軽量化×電子制御を持ち込んだのは、エンツォ フェラーリという世界399台の限定スーパーカーだった。マクラーレンも然りだが、いま、その世界観が、レギュラーモデルにまで降りてきたということ。それが、スーパーカーにおける進化の軌跡である。

そのこと(たとえば運転しやすくなったこと)を、積極的に楽しいいと思えるかどうか。それはスーパーカー乗りが個人で判断すべきものであろう。
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