ランボルギーニ/アヴェンタドール

エンツォ以来の衝撃、新世代のアヴェンタドール(2ページ目)

10年に一度のフルモデルチェンジを果たしたレイジングブルのフラッグシップ、ランボルギーニアヴェンタドール。おおげさに言うと50年ぶりとなる100%新設計のミドシップ2シーターだ。700psのV12エンジンもさることながら、軽量で強固なカーボン繊維強化樹脂のモノコックボディ&キャビンを採用するなど話題は尽きない。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

最新のスーパーカー、さもありなん!

ランボルギーニアヴェンタドール

カーボン繊維強化樹脂のフルモノコックボディを採用、タブとルーフから構成される乗員セルは重量わずか147.5kg。前後サブフレームにはアルミを用い大幅な軽量化を実現した

3月のジュネーブショーでワールドプレミアされたのち、最初の国際試乗会は5月、ローマ近郊のバレルンガサーキットにて催された。サーキットアタックオンリーの、最近の高性能車試乗会にはありがちな、試乗の機会。まずはそのパフォーマンスを存分に、そして合法的に味わいましょう、というわけだ。

ピットレーンには色とりどりのLP700が並べられ……、とはならなかった。見渡す限りの白と黒、ときおりオレンジ。黒はまだしも、スーパーカーの白人気だなんて日本の話だけかと思っていたら、どうやら北米や新興市場のみならず、欧州でもこのところ人気を博しているらしい。

個人的には、鮮やかな青や赤、黄といった、いかにもスーパーカーらしい派手な色の個体も見てみたかったのだが……。白いLP700なんてこれから飽きるほど日本で見ることができるというのに。

国際試乗会に使われた個体がそのまま各国市場のデモカーになるというのが慣しのランボルギーニだから、各市場の“欲しい色”がそのままピットレーン上に展示されたというわけだ。

ランボルギーニアヴェンタドール

トランスミッションは7速セミATのISR(インディペンデント・シフティング・ロッド)を搭載。最速のシフト時間は0.05秒を達成している。パワーウェイトレシオは2.25kg/psで、0-100km/h加速は2.9秒、最高速は350km/hとなる

ピットレーンを走り出して、いきなり確信した。すべてが変わったということは、性能の“出し方”=ライドフィールも変わったということ。そして、新次元のハイパフォーマンスを手に入れた、ということだ。

驚くべき身体性能の高さ、である。まるでキャビンだけがドライバーの意のままに、自由自在に動いてみせている、といった感覚。最近触ったクルマのなかでは、マクラーレンMP4-12Cが最も近い乗り味だ。ランボルギーニはおろか、フェラーリなど既存のスーパーカーにはなかった感触。強いてあげれば、エンツォフェラーリ以来の衝撃。そう、あのクルマもCFRPシャシーにフォーミュラーカーのようなアシ回りだったっけ。

とにかく乗りやすい。最初はコースを思い出すため(ガヤルドデビューの地もバレルンガだった)、オートマチックモードで先導車についていったのだが、7速ISRミッションが小気味よく、不似合いにも省燃費なマナーで、シフトアップしていく。強く踏み込まないかぎり、例の嫌味なしゃくりもない。

ハーフスロットルで回転を上げていくと、まるでモーターのように回っていく。確かに低い位置にある重心に向けて、一点収束していくような、タオルをギュッと絞るような、そんな感覚だ。クルマはとても軽く、ことによると運転していて、ガヤルドより小さく思えてしまうほど。

人を含むすべての車両構成要素がカーボンモノコックキャビンに直付けされているようで、それがクルマの輪郭(ノーズやフェンダーの存在、車両感覚)を忘れさせ、強力な一体感とあいまって、サイズそのものを小さく感じさせるのだった。

このあたりでもう、クルマに対する絶大な信頼感が芽生えていた。このクルマならなんぼでもイケるぞ、という自信も、だ。

速度が上がってきたので、ISRシフトの変速モードを最もハードなコルサ(サーキットモード)してみた。コルサでは、パドルで操作するマニュアルモードの設定しかない。

いきなりガンとアクセルペダルを踏み込んだ。シャーンといっきに回転計の針が駆けあがる。すかさず、シフトアップ。

ガッツーン!!

思わずぎゃっと叫んでしまった。確かにシフトアップ時間が短い。けれども、ダイレクトに過ぎる。グォー・ガツン、グォー・ガツンの繰り返しで身体を揺らすショックも尋常ではなく、そのたびに内臓が捩れるようだ。ランチのパスタが吹き出そう。しばらくコルサで試してみたものの、なかなか身体が慣れてこない。まるで、ドグミッションのレーシングカーのよう。これじゃ、高回転域でサウンドを楽しんでみる余裕さえなさそうだ。

1周ももたず、今度はスポーツモードに。結論から言うと、これがイチバン良かった。変速時間は十分に短いし、ダイレクト感もほどよくしっかり。従来モデルにおけるコルサモードに相当すると思われる。

しばらくスポーツ×オートでサーキット走行を楽しんだ。このフラッグシップモデルは、実は曲がることも大変得意。変速に気をとられることなく、ステアリングワークに集中してみるのも一興というわけである。

タイトベントでは、新しい電子制御4WDが積極的かつきめ細やかなコントロールをみせ、よほど上手に荷重を移動しないと、オーバーの姿勢を作り出す前に、前輪へとトルクが素早く回されて、なんのことはない、安定志向の走りとなってしまう。もちろん、制御オフしなければ、の話だが(700psでそれを試すのは勇気がいります)。そういう意味では、もう少しスポーティな演出があっても良かったのかも。このあたり、2駆とはいえマクラーレンMP4-12Cの方が、シロウトを“きゃっきゃっ”と喜ばせる演出力に長けていた。

とっても気持ちよかったのが、中高速コーナーを駆けるときだった。特に200km/h手前で抜ける高速コーナーが最高だ。前アシの手応えは決して薄れず、後アシは常に余裕を持って懐深く力を溜め込む。腰の入った姿勢がたまらなく心地いい。スピードメーターをみてびっくりしてしまうほど、安定している(見る余裕があるのも凄い)。11度まで上がるリアスポイラー、プッシュロッド式のアシ、強靭なCFRPキャビン、そしてよくできた電子制御。最新のスーパーカー、さもありなん!

どんどんラップタイムが縮んでいく。その間、スリルとはほぼ無縁だ。高回転域で突き刺さるような、これまでとは全く異なる、雑味のない轟音を楽しみながら、スポーツ×マニュアルで駆ってみる。なるほどこのクルマもまた、サーキットの横に住みたくなるクルマだった。
ランボルギーニアヴェンタドール

量産車で世界初のプッシュロッド式のダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。ブレーキにはセラミックローターが装着される。タイヤサイズはフロント255/35ZR19、リア335/30ZR20

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