癌(がん)/主治医との関係づくり・セカンドオピニオン

がん補完代替療法とのつきあい方

がん治療中、どうしても気になってしまう「がんに効果的」と紹介される製品や治療法。科学的な裏づけはよくわからなくても、実際に治った人の声が掲載されていると自分もこれで…と思ってしまうのも無理はありません。医師の立場から補完代替医療の考え方のポイントをお話します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

知らぬは医者ばかりなり!? がん患者の半数が試す代替医療

医師と補完代替医療

補完代替医療に対するニーズは高く、決して少なくない患者さんが実際に試しています。しかし、その実態は医師にはあまり知られていないのが現状です。

がん治療を受けている患者さんやそのご家族は、「がんに効果的」という様々な情報が目にとまってしまうでしょう。特にインターネット上には、様々な商品や治療法についての情報が氾濫しています。

厚生労働省研究班による全国調査でも、全国のがんセンターやホスピスで治療を受けているがん患者さんの約半数が、病院で受けられる以外の治療を試しており、そのほとんどを健康食品やサプリメントが占めていることが明らかになっています。また、それらの治療法に費やす金額は、平均で月額6万円を上回っていること、そしてそれらの患者さんの8割近くは、主治医に相談できていないことも報告されています。

医師が知らないところで、がんの患者さんは自らの感覚と情報処理能力を駆使して、多くの治療法を医師による治療と併用しており、そこに多額の費用をかけているというのが、我が国のがん医療の一面と言えます。

代替医療と補完医療

代替医療と補完医療

代替医療と補完医療。似ていますが、西洋医学による治療を行うかどうかという違いがあります。

医師が医療機関で(健康保険の適応を受けて)行う治療以外の医療のことを、「代替医療」や「補完医療」と言います。これら2つは補完代替医療と併記されることもあり、用語としては似ていますが、実は根本的に異なります。
  • 代替医療:西洋医学による医療の代わりに行う
  • 補完医療:西洋医学による医療を補うために行う
西洋医学も万能ではありません。がんに対する治療は日進月歩で良くなっていますが、それでも早期発見しても完治が難しいがんや、症状が出にくくかなり進行してから発見されるがんもまだまだあり、その治療成績は患者さんやそのご家族にとって十分に満足できるものではない場合もあります。

しかし、医師が医療機関で行う医療は、万能でなくても一定の効果は実証されたものです。その治療法を受けずに、その他の治療法を受けるという「代替医療」という考え方は、やはり医療としては問題があるのではないか、というのが私の考えです。

その一方で、現在の西洋医学のみの治療では完全にカバーできない部分は確かに存在します。それらの部分を西洋医学以外の治療が補ってくれる「補完医療」が果たすべき役割は十分あるでしょう。

統合医療という考え方

補完代替医療から統合医療へ

時代は統合医療です。補完医療を西洋医学と組み合わせて、より良い医療のあり方を考える時期は到来しつつあります。

すなわち、西洋医学は標準的医療として実施しつつ、それらで足りない部分を補う、すなわち、よりよい医療を行っていくために、補完医療をあわせて行うという考え方を、最近では「統合医療」と呼ぶことも多くなってきました。

例えば、
  • 抗がん剤の副作用によるしびれに対して鍼灸治療を併用する
  • がん治療後の痛みや不安を緩和するためにアロママッサージを行う
  • がん治療の効果を上げることを目的にサプリメントを併用する
といったもの。

これらを「統合医療」として行うためには
  • 補完医療が西洋医学と同等の安全性と有効性を担保されていること
  • 補完医療と西洋医学を行うスタッフが相互の特性を理解していること
  • 全体の治療を医師が統括して行うこと
といった条件が必要でしょう。

がん補完代替医療とのつきあい方

サプリメント

様々なサプリメントが開発・販売されていますが、安全性や有効性がきちんと担保された商品はまだまだ少ないのが現状です

今、医療の業界でも統合医療の実践に向けた取り組みが行われていますし、補完医療の様々な商品や治療法に対する検証もゆっくりではありますが進みつつあります。

とはいえ、「統合医療」に積極的に取り組んでいる医師は少数派ですし、きちんと検証された補完医療もまだまだ少ないのが現状です。
そういった中では、

  • 西洋医学による治療は自己判断等で中断しない (逆に、西洋医学の中断を求めるような治療法は、おすすめできません)
  • 補完医療による治療は、可能な限り医師に相談する (とくに、サプリメントについては薬剤師への相談も有効です)
  • 医療系国家資格者による補完医療による治療を受ける
といったところがポイントになると思います。

西洋医学を頭から否定することや、補完医療に過度の期待を寄せることはやはり科学的とは言えません。迷ったときには、少しおちついて、今回のポイントを思い出していただければと思います。

【参考サイト】
大阪大学大学院医学系研究科 生体機能補完医学講座
ガイドが協力員として参加している大阪大学の講座です。
補完医療やサプリメントの解説の他、厚労省研究班が作成した
がん補完代替医療のガイドブックもダウンロードできます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます