古民家/古民家探訪

埼玉・川口に今も残る大正時代の木造洋館(2ページ目)

埼玉・川口市に保存・公開されている旧田中家住宅。大正時代に建築された3階建ての洋館は迎賓館としての役目も担っていたそうです。良質な木材をふんだんに使用した室内は、和と洋が融合したまさに和洋折衷のつくり。なかでも、大広間は圧巻です。今回はこの洋館をご紹介しましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

洋と和の融合したつくりに

床の間

2階の座敷。床柱は絞り丸太です

建物全体の構成は、1階は玄関を入ると、正面に帳場があり、そのほかに小さめの応接間や食堂などがあります。2階には、書斎や大きな座敷があり、3階には大広間があります。

階段

来客はこの階段で2階や3階へ上がれます

外観は洋館ですが、1階の帳場や、2階の座敷などは和のつくりになっており、大正時代の建物によく見られる和洋折衷のつくりです。

4代目当主の田中徳兵衛氏は、村会議員や県議会議員を経て、貴族院議員を務めた人なので、来客が頻繁にあったと思われます。そのため、旧田中家住宅では、来客用の玄関のほかに、家人が日常使う玄関を設け、両者の動線を分けた設計になっています。来客は、玄関を入ると、応接間に通り、2階や3階に直接上がれるようになっていました。

良質な材料をふんだんに使った邸宅

田中氏は材木商だったこともあり、建築材料のひとつひとつにこだわったようです。木材は手に入る限り良質なものを求め、煉瓦はわざわざ専門の職人に焼かせたオリジナルだということです。

建物の建築費は、当時のお金で18万円と言われていますが、これを今の貨幣価値に換算すると、およそ2億5000万円になるのだとか。この建物がいかに高価な材料を用いて建築されたのかがよくわかります。

眺望のよい3階に迎賓の間を配置

お客様をもてなす場として設けられた大広間は、便利な1階ではなく、3階にありました。
大広間

3階にはとても広く、豪華なつくりの大広間がありました

これは眺望を重視したからだろうと考えられています。この建物が建築された当時は、まだ3階建てはとても珍しかったでしょうから、かなり遠くまで見通せたのではないでしょうか。写真を見てもわかるように、家具やグランドピアノをおいても十分なゆとりがあります。シャンデリアが設置され、天井や床には凝った装飾が施されていますが、部屋全体の色調は控え目です。そのため、とても落ち着いた雰囲気を醸し出していました。

また、旧田中家住宅は、この洋館のほかに、和館(1934年・昭和9年建築)や茶室(1968年・昭和43年建築)があり、季節ごとにいろいろな催しが行われます。広大な和風庭園を散策しながら、何十年も前の時間に思いをはせてみるのもよいのではないでしょうか。

旧田中家住宅(川口市立文化財センター分館・国登録有形文化財)
住所:埼玉県川口市末広1-7-2
問い合わせ先:電話048-222-1061(川口市立文化財センター)
交通案内:SR埼玉高速鉄道 川口元郷駅より徒歩約8分、JR京浜東北線 川口駅東口よりバス・11系統・12系統・草加駅西口行き「末広1丁目」下車すぐ
公開時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の時は翌日も休館)、国民の祝日、年末年始(12月28日~1月4日)
入場料:大人200円(20人以上の団体は160円)、小・中学生50円(40円)
駐車場:あり(普通車13台)
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