全線が国登録有形文化財となった天竜浜名湖鉄道
静岡県西部、東海道本線の掛川と新所原を結ぶ天竜浜名湖鉄道は、元は東海道本線のバイパスとして1940年に全通した国鉄二俣線。それが1987年に第三セクター鉄道に転換したローカル鉄道である。国鉄時代からの古くて味わいのある駅舎や施設が数多く残り、大切に使われていることから、2010年12月に全線が国登録有形文化財となった。これを機会に、日本の原風景とも言うべきノスタルジックな鉄道旅行を味わえる天竜浜名湖鉄道(通称、天浜線)を紹介してみたい。今回は、天浜線の西端、新所原から掛川に向かって列車の旅をしてみよう。
名物のうなぎ弁当を買って、天浜線の旅がスタート
静岡県の西端に位置する新所原は、豊橋から東海道本線の普通列車で2駅10分。東海道本線の駅に隣接して天浜線の駅がある。小さな駅舎内で目立つのは、改札口にある「駅のうなぎ屋」。浜名湖と言えばうなぎが有名なので、さっそく注文した。温かいうなぎを食べさせるというポリシーから、注文してから作り出す。ホームで出発を待っている列車内へ、店員さんが発車間際に届けてくれた。さっそく弁当を広げると、列車はゆっくりと動き出した。
日本の大動脈である複線電化の東海道本線と分かれる天浜線は、単線非電化、小ぶりのディーゼルカーが一両だけでコトコト走っていく。やがて車窓右手に浜名湖が見えてくる。東海道新幹線の車窓から見る浜名湖とは違って、どこかのどかな鄙びた風情だ。
駅舎利用の食事処は、よりどりみどり
みかんの産地として知られる三ケ日は、天浜線の主要駅のひとつだ。木造駅舎は登録文化財施設だが、中には古き良きアメリカンスタイルの洒落たカフェがある。天浜線の各駅は、駅舎を再利用して、・レストラン(西気賀)
・手作りパン屋(都筑)
・ラーメン屋(気賀)
・蕎麦屋(二俣本町、遠江一宮)
・和食(天竜二俣)
さらには歯科医院(知波田)まである。駅に賑わいを取り戻そうとの試みで、地元の人たちのみならず、旅行者にもありがたい存在だ。
次のページでは、湖岸の駅とノスタルジックな車窓を紹介します。