死亡するまで年金が受け取れる安心は魅力!
個人年金保険は、老後の生活費を確保する目的で利用する保険です。一般的には、加入時に決めた年齢(60歳・65歳・70歳など)から、契約した年金額を受け取ります。年金の受取期間は、死亡するまで受け取るタイプと、一定期間のみ受け取るタイプがあります。前者を終身年金、後者を確定年金(定期年金、定額年金と呼ぶ場合もある)と呼びます。終身年金は、年金受取開始後の一定期間(10年が多い)は、本人(被保険者)が死亡しても残りの期間の年金を遺族が受け取れる「保証期間」がついたタイプが一般的です。このタイプを保証期間付終身年金といいます。
確定年金は、年金受取開始後、本人の生死に関わらず一定期間(5年・10年・15年など)の年金が受け取れます。本人が死亡した後、残期間の年金は遺族が受け取ることになります。ともに、残期間の年金は一括で受け取ることもできます。
終身年金の最大のメリットは、生きている限り、何歳でも年金が受け取れること。長生きリスクがどんどん高くなる昨今、生きている限り年金が受け取れる安心は魅力的です。では、老後の備えとして、終身年金は加入しておいたほうがいいのでしょうか?
個人年金保険の保険料の払い方には、コツコツ積み立てるタイプと、一時払いや全期前納のまとめ払いがありますが、積み立てタイプの代表である月払いで検証してみました。
終身年金は保証期間中に死亡すると元本割れに
下記に、ある生命保険会社の保障期間付終身年金と10年確定年金の受取額例を上げました。長生きリスクは、男性より女性のほうが高いので、保険料例には女性を取り上げました。条件)30歳女性、年金額は60万円、65歳保険料払込満了・年金受取開始(保険料払込期間=35年)、月払
●10年確定年金
・保険料 1万4058円
・保険料払込総額 590万4360円
・年金受取総額 60万円×10年=600万円
●10年保証期間付終身年金
・保険料 3万8676円
・保険料払込総額 1624万3920円
・保証期間の受取総額 60万円×10年=600万円
・元が取れる年齢 92歳
「最低保証の年金額」は、保証期間中(10年=60~69歳)に死亡しても、必ず受け取れる年金額です。「元が取れる年齢」は、何歳まで生きて年金を受け取れば、年金受取総額が払込保険料総額を上回るか(つまり、元本割れしないか)を計算してみたものです。実際には、増額年金や増加年金がプラスされることもあるので、いずれも若干変わります。
この受取額例を見てわかるのは、終身年金の受取額は、保証期間の10年だけで比較すると、10年確定年金の受取額の約37%と少ないことです。日本の高齢化はまだ続くと予想され、100歳超えの女性も珍しくなくなるでしょうから、元は取れそうです。でも、保証期間内に死亡してしまうと、大幅な元本割れになります。
長生きに備えるには魅力的な終身年金ですが、皆さんはこの受取額例を見てどう思いましたか?払える保険料で年金額を設定するにしても、月何万円のお金を何十年も払い続ける自信はありますか? そして、元が取れるまで長生きする自信はありますか? と考えていくと、終身年金でなくてもいいと思ったのではないでしょうか。
保険の貯蓄性に期待できない昨今では、個人年金保険自体への加入は積極的にすすめていません。
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