癌(がん)/がんの3大療法・その他の最新療法

注目の先進医療…「陽子線治療」の特徴と留意点

がん治療の三大療法は、手術、抗がん剤治療、放射線療法。これらは世界的に治療効果があると認められており、日本では基本的に保険が適応されます。これらの3大療法に加え、近年よりよい治療成績が期待されている「陽子線治療」について解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

万能ではないがん治療の三大療法

三大療法とがん

手術、抗がん剤、放射線治療は、三大療法とも呼ばれる標準治療法。しかし万能治療ではありません

がんに対する標準治療は、手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つ。この3つをどのような組み合わせでどのような順序で行うかは、がんができた部位や進行度によって異なります。

これらの治療法は世界で治療効果が認められており、日本では保険が適用される、いわば「標準治療」です。しかし、がんが完全に制圧されたかというとそうではありません。がん治療が進歩したとはいえ、5年生存率が非常に低いがんも残念ながら存在しています。

日本で、いわゆる「健康食品」が補完代替医療として使われることが多いのも、標準治療による治療成績に満足していないことの現れではないかと思います。

新しいがん治療法……陽子線治療の特徴

そんな中、近年、注目されているのが「陽子線治療」。陽子線治療は放射線治療と似ていますが、がん細胞に、よりピンポイントに働きかけることができるのが特徴。周りの正常な細胞に影響を及ぼしにくいため、より高い効果が期待できます。

しかも、陽子線治療は保険の適用にはなってはいないものの、厚生労働省に「先進医療」として認められた治療法でもあります。これが、他の補完代替医療と大きく異なる点です。

先進医療とは、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」とされています。簡単に言えば、一定の効果については確認されているが、健康保険の適用になるかどうかを評価中であるという医学的な治療のことです。


陽子線治療を受ける際の留意点

陽子線治療

現在は「先進医療」として高額な医療費が必要。しかし今後の実績によっては、保険診療として認められ、21世紀の新しい標準治療の一つとなり得る可能性もある

「先進医療」である陽子線治療を受ける際に、留意しておくべき点があるので、確認しておきましょう。

■陽子線治療が適応されるがん
がん治療に用いられる陽子線治療は、すべてのがんに適応となっているわけではありません。現時点では、原発性の脳腫瘍、肺がんの一部、肝細胞がん、単発の転移性肝がん、前立腺がんなど、一部の疾患に限られています。

■陽子線治療が受けられる施設
陽子線治療には、「サイクロトロン加速器」という、特殊で、巨大な装置を必要とすることがあり、どの病院でも受けられるわけではありません。2010年10月現在、6つの施設でのみ受けることができます。

■陽子線治療の費用
先進医療として効果は認められつつあるものの、健康保険の適用にはなっていないため、治療費は自己負担となります。現在、陽子線治療には2,883,000円が必要です。最近では、先進治療もカバーする民間医療保険も発売されていますので、そういったもので備えておられる方もいらっしゃいます。

今後、数年の評価期間できちんとした結果がでれば、保険診療となる可能性がある陽子線治療。近い将来は、がんの治療成績向上に非常に大きな役割を果たす重要な治療法になっているかも知れませんね。
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