前立腺がんの症状
超音波を発する器具を肛門から入れ、前立腺の状態を調べる
大きさを増すにつれて「排尿症状」や「蓄尿症状」などが現れます。
「排尿症状」とは排尿時に見られるもので、
- 勢いがない
- 途切れる
- 出始める(出終わる)までに時間がかかる
- 力まないと出ない
「蓄尿症状」は膀胱が過敏になることによって起こるもので、トイレに行く回数が夜間で1回以上、昼間で8回以上の「頻尿」、排尿し終わってもスッキリしない「残尿感」、がまんできないような尿意を急にもよおす「尿意切迫感」などがあります。
前立腺がんは骨に転移しやすいため、進行すると、腰椎、大腿骨、肋骨などの痛みが出てきます。さらに進むと、下半身が麻痺してくることもあります。リンパ腺に転移すると、リンパ液の流れが悪くなるので足がむくみます。
前立腺がんの検査
前立腺がんの検査では、PSA(前立腺特異抗原)検査、経直腸的超音波検査、直腸診を必ず行います。これらのうち、1つでも異常が認められた場合は、前立腺生検を行い、組織を採取して、がんかどうかを確定します。生検の結果、がんがみつかれば、CTやMRI、骨シンチグラムという方法などで病気の進行度を確認し、治療方針を決めます。費用は3000~5000円です。
■PSA検査
がんの有無を調べる血液検査で、腫瘍マーカーとなるPSAを調べます。通常と同じ採血ですから、肉体的負担はありません。
■経直腸的超音波検査
超音波を発する器具を肛門から挿入し、超音波の反響によって前立腺の状態を調べます。検査に伴う苦痛はありません。費用は2500~4000円です。
■直腸診
直腸から指を挿入して前立腺に触れ、大きさや固さを確認します。触れたときに親指の下のふくらみの硬さなら正常、付け根の骨の硬さならがんを疑えといわれています。
■前立腺生検
以上の検査で前立腺がんが疑われる場合、最終的な診断を行うために組織を採取して顕微鏡で検査します。最近は、超音波プローブという器具を肛門から入れ、針で前立腺の組織を何カ所かから採ります。すでに述べた経直腸的超音波検査と同じような方法で行うので痛みは少なく、麻酔も基本的にかけません。
針といっても、挿入する器具の内筒と外筒がスライドして瞬時に採取する仕組みなので、1カ所あたり1秒ほどで済みます。検査時間は30分~1時間くらいです。結果が出るまでには1週間ほどかかります。費用は10000~30000円です。
前立腺がんの診断
PSA検査はすべてのがんの中で最も有用な腫瘍マーカーであるとされ、80~90%の確率で前立腺がんを発見できるといわれています。PSAは前立腺の上皮細胞だけでつくられる糖タンパクで、その血中濃度を表したものがPSA値(ng/ml)です。PSA値4.0以下をがんの疑いが低い「陰性」、4.1~10.0を「グレーゾーン」、10.1以上をがんの疑いの高い「陽性」としています。
その後の生検でがんが見つかる率は、4.1~10.0の人で20~30%、10.1以上の人では50%ぐらいになります。20.0を超えると80~90%に上がります。20.0以上になると、リンパ腺に転移している可能性が高くなります。
前立腺がんの悪性度の診断
生検で前立腺がんが認められた場合、グリーソンスコアという指標で悪性度を表します。前立腺がんの多くは悪性度の異なる病変を複数含んでいるので、最も多い病変と次に多い病変を足してスコア化します。悪性度は5段階に分類(数字が大きいほど悪性)します。例えば、最も多い病変が「4」で、次に多い病変が「3」だとするとスコアは「7」となります。グリーソンスコアでは「6」以下は悪性度が低い、「7」は中程度、「8」~「10」は悪性度が高いと評価されています。