治療の第一歩は正確な検査から。まずは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)と確定診断するための検査法から解説します。
全身性エリテマトーデス(SLE)の検査
血液検査が非常に重要です。自分を攻撃してしまう抗体、自己抗体をチェックします
中心となるのは血液検査。以下のような検査結果が出た場合、SLEと診断される可能性が高まります。
- 白血球の減少、赤血球の減少、血小板の減少が見られる
- 血沈 (ESR) という炎症の程度を見る検査で通常以上の反応が出る
- 血清補体価 が炎症に伴い低下し、「補体」という免疫を担うタンパク質が炎症のために使われてしまうため、血液中では補体の値が下がっています
- 抗核抗体、特に核の中にあるDNAに対する抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体などが上昇し、LE細胞(SLEで出てくる細胞)が陽性になる
- ループスアンチコアグラントという血の固まるのを抑える因子が上昇し、陽性になる
- 抗カルジオリピン抗体というタンパク質が上昇する
- 梅毒に感染していないにも関わらず、梅毒反応が陽性になる
検尿検査は定期に行われます。それだけ、腎臓のチェックが必要になります
- 検尿検査:蛋白尿の有無をチェックする
- 胸部X線、胸部CT:心臓の大きさや胸膜炎の有無をチェックする
- 心臓超音波検査:心筋炎、心外膜炎などの合併症をチェックする
- 腎生検:皮膚の上から針を刺して、腎臓の組織を一部採る検査。腎炎の程度がわかるので、治療方針のために必要な検査
- 頭部CT、MRI:CNSループス(痙攣や頭痛の原因)の有無を検査する
上記の検査と症状から「SLE」と確定診断されると、具体的な治療を始めることになります。
全身性エリテマトーデスの治療
免疫異常によって全身に炎症が起こっているので、炎症を抑える治療が中心になります。特にどの臓器が炎症を受けているかによって多少の治療の違いはありますが、現在ではステロイドを中心として炎症を抑える治療を行います。
■ステロイドの使用
長期に渡り使用。ステロイドパルス療法といって、ステロイドを短期(3日間)に大量に使用することがあります。
名称:プレドニゾロン(プレドニン)、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)、デキサメサゾン(デカドロン)、ベタメサゾン(リンデロン)
ステロイドの長期使用の副作用は以下の通り。
- 細菌やウイルス、結核に感染しやすくなる
- 高血圧、糖尿病になる
- 肥満になる
- 緑内障、白内障で目が見えなくなる
- 骨がもろくなる。骨粗症リスクが高まる
- 大腿骨の骨頭が壊れて歩けなくなる
■免疫に関わる白血球を抑えたり、増えないようにする薬の使用
抗がん剤にも使われる薬で、白血球が増えるのを抑える薬でもあります。シクロフォスファミド(エンドキサン)をステロイドと同じように大量に短期に使用することもあります。
名称:アザチオプリン(イムラン)、シクロフォスファミド(エンドキサン)
アザチオプリン(イムラン)は副作用が少なく、シクロフォスファミド(エンドキサン)はSLEに有効と報告されていますが、保険適応になっていません。が、1つの薬が自費になりますと、自費と保険診療の混合診療が認められていませんので、その病気について本来すべて自費になります。そのため、その使用については医療機関や自治体によって対応が様々です。現在、この問題については全く解決しておりません。
副作用としては肺、腎臓、肝臓、骨髄などへの影響があります。特に、シクロフォスファミド(エンドキサン)では無精子症の危険があります。
■血漿交換
透析と同じような機械を使って、血液を外に出し、血液成分を入れ替える治療法。血液(新鮮凍結血漿)を使うため、ウイルス感染のリスクは否定できません。自分を攻撃する抗体を除く治療方法です。
■免疫を調整する薬の使用
移植などにも使用されている薬で、免疫を抑制する薬を使用する方法。
名称:タクロリムス(プログラフ)、ミゾリビン(ブレジニン)、サイクロスポリンA (ネオーラル)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
SLEによる腎炎によって尿蛋白、浮腫などを起こすネフローゼ症候群になると、サイクロスポリンAは保険適応になります。ミコフェノール酸モフェチル(MMF)はSLEに効果があると報告されていますが、保険適応がありません。腎臓への影響、感染しやすくなるなどの副作用があります。
■炎症を抑えるステロイド以外の薬の使用
痛み止めの薬である非ステロイド系抗炎症薬を使用しますが、主に関節痛と発熱に対して使われます。
名称:アスピリン(バッファリン)、イブプロフェン(ブルフェン)など
副作用:肝障害、腎障害、胃十二指腸潰瘍など
今後、免疫を調整する薬が出てくると期待されています。