統合失調症/統合失調症の原因・症状

Q&Aで知る統合失調症の基礎知識と発症要因

統合失調症の原因はよく分かっていませんが、そのリスク・ファクターは幾つか知られています。今回はQ&A形式で統合失調症のこうした基礎知識を詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

統合失調症の原因は厳密には解明されていない

統合失調症の原因は分かっていませんが、リスク・ファクターは良く知られています

統合失調症の原因は分かっていませんが、リスク・ファクターは良く知られています

現実と非現実。通常は明らかなその境界が統合失調症では妄想幻聴などのために、ぼやけやすくなります。

統合失調症の原因はまだ厳密には解明されていませんが、遺伝子などが寄与する生物学的要因のほか、心理的要因や社会環境的要因などが複合して、統合失調症の発症につながると考えられています。

今回は、統合失調症の発症率発症のリスクファクターなど、統合失調症に関してよく知られている事をQ&A形式で詳しく解説します。


Q&Aで知る統合失調症の基礎知識


1.統合失調症の発症率はどの位だと思われますか?

(A) 0.1%
(B) 1%
(C) 5%
(D) 10%

正解は(B)の1%です。統合失調症は国々により発症率に若干差異がありますが、日本での発症率は約1%と、世界の中ではほぼ平均です。また、男女比はほぼ1:1です。

2.統合失調症の初発年齢は以下のどの年代が多いと思われますか?

(A) 10歳未満
(B) 10代から30代
(C) 40代以降

正解は(B)の10代から30代です。統合失調症はどの年代でも発症する可能性がありますが、もし40代以降、妄想や幻聴が初めて現われた場合、脳血管障害など脳内の器質的問題がその原因になっている可能性も少なくありません。

3. どちらの季節に生まれる事が統合失調症の発症リスクにつながりやすいと思われますか?

(A) 冬から早春にかけて
(B) 晩春から夏にかけて

正解は(A)の冬から早春にかけてです。これを説明する説として、インフルエンザが流行る冬季は、母親がウイルスに感染するリスクが他の季節より相対的に高くなります。また、日が短い冬季は日照量不足が原因で、その程度によっては体内でのビタミンDの産生がかなり不充分になる可能性もあります。こうした冬季特有の出来事が原因で、胎児の中枢神経系の発達に何らかの悪影響が出る可能性があるためだと言われていますが、実はこうした説への厳密な意味での検証は得られていないようです。しかし、冬季出生は統合失調症の発症リスクに統計上、明確につながっています。

4.どちらで生まれ育った方が統合失調症の発症リスクを高めるでしょう?

(A) 大都市
(B) 農村部など人口密度の少ない地域

正解は(A)の大都市です。生まれ育った地域の人口密度は統合失調症のリスク・ファクターの一つです。人口密度が高いという事は、自分の周りにたくさん人がいるという事。もし周りに人がたくさんいるとなれば、いろいろ気を使う事も多いでしょう。人口密度が高くなる事で生じやすい、日常のストレスが統合失調症の発症リスクにつながると言われています。


5.統合失調症の発症要因として生物学的要因は重要です。生物学的要因は遺伝子によって定まる部分が大きいです。では、遺伝子が全く同じ一卵性双生児の一方が統合失調症を発症した場合、もう一方の発症リスクはどの位だと思われますか?

(A) 1%
(B) 25%
(C) 50%
(D) 75%
(E) 99%

正解は(C)の50%です。統合失調症の発症率は通常、約1%。遺伝子が全く同じ人が統合失調症を発症した場合、発症リスクは通常より約50倍高まります。統合失調症の発症リスクとして、生物学的要因の寄与は大きい事が分かります。と同時に、遺伝子が全く同じ相手が発症しても、発症しない可能性も50%あり、統合失調症の発症要因として、生物学的要因以外に、心理的あるいは社会環境的要因の重要性も分かります。


6.統合失調症の治療薬である抗精神病薬は統合失調症の症状のなかでも特に急性期の症状に効果的な治療薬です。今日、抗精神病薬と呼ばれている治療薬は幾つもありますが、その一つが初めて発見され、統合失調症の治療薬として急速に普及した事は、統合失調症の治療の歴史で画期的な出来事です。それは以下のいつ頃の事だと思われますか?

(A) 1900年代
(B) 1930年代
(C) 1950年代
(D) 1970年代

正解は(C)の1950年代です。最初の抗精神病薬はクロルプロマジンという化学物資で、当時、フランスの外科医であったアンリ・ラボリ(Henri Laborit,1914-1995)さんが患者さんに投与したところ、患者さんの意識状態が変容する事に気付いた事がその始まりです。この治療薬が統合失調症の急性期の症状に効果があることは、統合失調症の治療法に革命的と言えるほど大きな変化をもたらしました。

7.出生時の父親の年齢で、統合失調症の発症リスクは以下のどの年代で一番高くなると思われますか?

(A) 20代
(B) 30代
(C) 40代
(D) 50代

正解は(D)の50代です。出生時の父親の年齢が高くなればなるほど、統合失調症の発症リスクは高くなっていきます。50代では20代の約3倍のリスクがあると言われています。年齢と共に、精子に何らかの問題がある確率が増加する事などが、その原因と言われています。


最後に統合失調症の発症リスクはQ&Aで紹介しました通り、幾つかよく知られていますが、リスクがある方が統合失調症を予防する手段に関しては、まだ充分分かっていません。しかし、統合失調症の研究は急速に進んでいる以上、将来的にはこうした事もいろいろ分かってくるのではないかと思います。

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