依存症/アルコール依存症

知っておきたいアルコールの急性作用

お酒は私たちの生活に欠かせないものですが、その正体はアルコールという化学物質で、中枢神経系に作用します。一度に大量飲酒すると、呼吸が止まり、命の危険が生じる事もあります。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

アルコールは脳に作用する薬物の一つであるという認識はありますか?

アルコールは脳に作用する薬物の一つであるという認識はありますか?

私たちの生活に欠かせない酒。お酒を飲むと普段、打ち解け難い人間関係が円滑になったりといった、良い社会的効能がありますが、お酒の正体はアルコールという化学物質です。アルコールの使用は、一時の大量飲酒による急性中毒症状から、長期間の常用による依存症まで、さまざまな問題を生み出します。今回は、アルコールの問題を理解する上での基礎知識として、アルコールの急性作用についてお話したいと思います。

アルコールは脳に作用する薬物の一つです

口から入ったアルコールは速やかに血中に移行し、脳の神経細胞膜に作用することによって、知覚、認知、運動に変化が生じます。お酒が入るとどうなるかは、飲み会などで、周りの人の様子を思い浮かべるとわかると思います。

飲み始めると、皆の気分が良くなり、笑い声が聞こえたり、話し声も次第に大きくなると思います。さらに飲むとどうなるかは、人によってさまざまでしょう。自慢話を始める人、笑い続ける人、泣いてしまう人、…。

また、目の前のコップを倒してしまったり、お酒を注ごうとして、こぼしてしまったりといった事もあるでしょう。(この時点で飲むのを止めるべきだと思いますが)さらに飲んでしまうと、周囲の人に絡み始めたり、大声で怒鳴ってしまったりといった問題行動が現れたり、バタンと倒れてしまうかも知れません。帰りは千鳥足で、翌朝、その夜の記憶は無いといったことは今まで無かったですか?

このように、お酒が体内に入ると、気分が爽快な状態から、次第に酔いが進み、酩酊状態となり、さらに飲み続けると泥酔状態になります。こうしたアルコールの生理作用の特徴を一言で言うと、中枢神経系の抑制です。前頭葉から大脳皮質、小脳の機能が抑制されますが、一気飲みのように、一度に大量飲酒した時は、延髄の呼吸中枢が抑制されてしまい、命を失う事もありえます。

悪酔いしてしまう前に、お酒を飲むのはやめるべきです。しかし、アルコールが入った状態では、判断力が低下してしまい、自分がどの位、酔っているのか中々把握できないと思います。

次に、お酒にどの位酔ったか知るベストの方法について述べます。

お酒の酔い具合のベストの指標は血中アルコール濃度

アルコールの脳への作用は、その血中濃度に比例します。血中アルコール濃度(BACと略されます)が高くなればなるほど、中枢神経系が強く抑制されます。BACとアルコールの生理作用の関係を以下にまとめてみます。

■0.02~0.15%
  • 気分が良くなる
  • 痛みを感じにくくなる
  • 視力、聴力が低下する
  • 判断力が低下する
  • 気が大きくなったり、怒りっぽくなる
■0.15~0.3%
  • 千鳥足になる
  • 何度も同じことを話すようになる
■0.3~0.4%
  • 立ち上がれなくなる
  • ろれつが回らなくなる
■0.4%~
  • 意識不明になる
  • 失禁する
  • 呼吸停止に至る
BACを直接測定するのは難しいのですが、BACと相関関係にある呼気中のアルコール濃度を測定することによって、BACを推定できます。BACと呼気中アルコール濃度の関係は以下の式で表わされます。

血中アルコール濃度(%) = 呼気中アルコール濃度(mg/L) * 0.2

例えば、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/Lの時は、血中アルコール濃度は0.03%であると推定できます。この0.15mg/Lという数字は、酒気帯び運転の法律上の基準値です。BACが0.03%の時は、上記のように、視力が落ち、判断力も低下します。さらに、条件反射は遅くなり、また、運転に必要な、目で見た知覚と、ハンドルを持つ手と、ブレーキ、アクセルを踏む足の動きの間の協調性も低下するので、事故が起こりやすくなります。

アルコールは交通事故ばかりでなく、転倒、転落、暴力、犯罪行為などの原因にもなり、また、大量飲酒を継続していると、肉体的にも精神的にもアルコールに対する依存が形成されてしまい、社会生活上、深刻なトラブルが生じます。飲むべきではない時はアルコールを口にしないというのがアルコールが引き起こす問題を回避する第一歩です。
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