腎臓・膀胱・尿管・尿道の病気/頻尿・尿失禁・尿漏れ

頻尿・尿失禁の予防・治療

主として腹圧性尿失禁と過活動膀胱に対する治療法を紹介します。特に腹圧性尿失禁には薬物治療よりも、理学療法や手術が有効です。

後藤 百万

執筆者:後藤 百万

泌尿器科医 / 腎臓・膀胱・尿管・尿道の病気ガイド

腹圧性尿失禁の治療法

おしっこを我慢する膀胱訓練は有効

おしっこを我慢する膀胱訓練は有効

■効果の高い骨盤底筋訓練
尿道の括約筋が弱くなることで起こる腹圧性尿失禁の治療には、理学療法か手術療法が有効です。残念ながら現在のところ、効果の高い薬物治療はありません。

理学療法は緩んだ筋肉の鍛錬を狙いとしており、骨盤の底にハンモック状に張っている筋肉群(骨盤底筋群)を締める「骨盤底筋訓練」が中心です。具体的には、膣や肛門を締める運動を1日に30回~50回程度行います。排尿時に尿を止める練習も同じような効果をもたらします。

そのような体操を続けることで尿道の括約筋を強めたり、うまく収縮させたりすることにより腹圧性尿失禁の改善を図ります。

■電気刺激による療法
骨盤底筋訓練は、軽度から中程度の腹圧性尿失禁であれば、6~7割の方に改善効果が得られるとされています。ただ、ひどい症状については十分な効果は認められないようです。

骨盤底筋訓練以外では、一種の電気刺激として「干渉低周波治療」という保険適用の治療法があります。低周波による電気刺激を皮膚から骨盤の底の筋肉に当てることにより骨盤の筋肉や尿道括約筋などを強める治療法です。週に2、3回の割合で気長に続けますが、必ずしも即効性のある目覚しい効果が得られるわけではありません。

■成績のよい手術療法
骨盤底筋訓練では改善されない、女性の重度の腹圧性尿失禁には、TVT(Tension-free VaginalTape)という手術が標準的な選択です。腹圧性尿失禁に対する治療効果は90%以上と高く、尿失禁を完全に治すことができます。

膣を少し切開し、下腹部に5mmの切開を2つ加え、テープをかけて尿道を支えるという手術ですが、30分ほどで済みます。排尿障害を専門にしている泌尿器科医に依頼すれば、手術をしてもらうことができます。

過活動膀胱の治療法

■薬物療法と理学療法
過活動膀胱によって引き起こされる頻尿や夜間頻尿、切迫性尿失禁などには薬物治療が有効です。膀胱が勝手に収縮するのを抑える働きのある抗コリン薬を適切に服用すれば、頻尿も切迫性尿失禁もかなりの程度コントロールすることができます。

腹圧性尿失禁の場合と同様、過活動膀胱による切迫性尿失禁にも膀胱訓練という有効な理学療法があります。おしっこをしたいと思っても我慢して、尿を溜めるように練習する方法です。

最初は15分くらいの我慢から始め、だんだんと排尿の間隔を伸ばします。そうして、30分、1時間と我慢する時間を長引かせていくことで膀胱を広げ、過活動膀胱のコントロールを図ります。抗コリン薬による薬物療法と同等の効果があるという報告もあります。

尿失禁の予防法

■日常生活に注意を払う
過活動膀胱は冷たいものに触ったり、寒いところに行ったりすることで引き起こされることがあります。ですから、症状を和らげるために、なるべく暖かい環境下で過ごすといった日常生活上の注意も効果があります。

切迫性尿失禁の場合には、おしっこがしたいと思ったときには間に合わないので、早めにトイレに行くとか、外出時にあらかじめトイレの場所を確認しておくといったことを習慣付けておくとよいでしょう。例えば、「テレビを見ているときに催したら、終わりまで付き合わず、その場でトイレに走る」といった感じです。

■トイレ環境の整備にも目を向ける
お年寄りの場合には、夜間の備えとしてトイレに近い部屋で休ませたり、ポータブルトイレや採尿器を使ったりするといったトイレ環境の整備も尿失禁症状のコントロールや予防に役立ちます。

また、お年寄りに多い認知症による機能性尿失禁に対しては、誰かがトイレに連れて行くといった、周囲のケアが大切です。
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