肝臓・すい臓・胆のうの病気/B型肝炎

B型肝炎の治療法・薬・助成

B型肝炎の治療法は35歳未満か35歳以上かで異なります。インターフェロンや抗ウイルス剤などの薬、治療にかかる費用を含め、解説します。

染谷 貴志

執筆者:染谷 貴志

医師 / 消化器・肝臓の病気ガイド

B型肝炎の治療法

B型肝炎の治療には注射によるものや、飲み薬によるものなど、様々な方法があります。

B型肝炎の治療には注射によるものや、飲み薬によるものなど、様々な方法があります。

B型肝炎ウイルスは、一度体内に住みつくと完全に排除することはできません。慢性肝炎の治療では、ウイルスの増殖を持続的に抑え、炎症を沈静化することが目標になります。具体的にはASTやALTといった肝機能正常化、HBe抗原の陰性化(セロコンバージョン)、HBV-DNAの減少を目指します。そしてこの状態を持続するようにします。

B型肝炎が起こっても、必ずすぐに治療が必要というわけではありません。自然に肝炎が沈静化することもあるため、経過観察するということもあります。HBV(B型肝炎ウイルス)キャリアの発症による慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変など)では全身状態、肝炎の病期、活動度などにより、治療法の選択が行われます。

現時点では、厚生労働省からB型肝炎治療のガイドラインというものが出ていて、これがひとつの治療目安になります。B型肝炎では、年齢を35歳未満と35歳以上に分けて治療を考えています。

■35歳未満のB型肝炎患者の場合
自然にセロコンバージョンが起こることも少なくないため、基本的に経過観察。2~3ヶ月間経過観察してセロコンバージョンが起こらなければ、治療が検討されます。主に治療の対象となるのは、治療効果が出やすい「ウイルス量があまり多くなく、肝臓の線維化がある程度進行していて、炎症が強い」状態の人。ウイルス量が多い場合は治療効果が出にくいので、通常経過観察を続けます。また、ウイルス量が多くても、線維化が軽く、炎症も強くない状態であれば、「無症候性キャリア」とみなし、治療をせずに経過観察することが多くなります。

■35歳以上のB型肝炎患者の場合
35歳以上で、線維化や炎症がある程度以上進んでいる場合は、基本的に治療の対象となります。ただし、ウイルス量であったり、肝炎の進行度の程度であったり、さまざまな状況によって治療方法は異なることがありますので、必ず肝臓専門医を受診し、適切な診断を受けるようにしましょう。

行われる治療法には、大きく分けて、抗ウイルス療法、免疫療法、そして肝庇護療法があります。抗ウイルス療法には、インターフェロン療法、インターフェロンと副腎皮質ステロイドホルモンの併用療法、抗ウイルス薬(ラミブジン内服など)があります。免疫療法には、副腎皮質ステロイドホルモン離脱療法、プロパゲルニウム製剤内服などがあります。また、肝庇護療法には、グリチルリチン製剤の静注、胆汁酸製剤の内服があります。 いずれの治療法も「肝臓の状態」や全身状態を的確に把握した上で、経過をみながら、副作用などにも注意して慎重に行う必要があります。

インターフェロンによるB型肝炎治療

B型慢性肝炎に対する治療の1つとしてインターフェロン療法があります。インターフェロン療法は一般的にはHBe抗原陽性の患者さんに投与します。この場合、 ALT値が上昇したあとの肝炎の回復期に投与する方法が最も効果的。この投与方法ではインターフェロンを投与しなかった患者さんよりもHBe抗原の陰性化率、肝機能の正常化率が高いことが示されています。ただし、B型肝炎では、インターフェロンを使用しても、C型肝炎のように完全にウイルスが排除されることはありません。また、治療中はHBe抗原が消えていても、治療終了後に再び現れることもあります。またインターフェロン治療は発熱などを初めとして 様々な副作用が出ることがあります。こういったことも知った上で、治療を受けることが大切です。

抗ウイルス薬(ラミブジンなど)によるB型肝炎治療

現在日本でB型肝炎に使用できる抗ウイルス薬はラミブジン、アデフォビル、エンテカビルの3種類があります。これらの抗ウイルス薬はHBV(B型肝炎ウイルス)の増殖を抑制する薬です。抗ウイルス薬の投与を行うと多くの症例でウイルス量が低下し、ALT値の改善が認められます。日本のデータでは、ラミブジン を用いた治療によるALT値の正常化率は、6ヶ月88%、1年86%、2年83%と報告されています。抗ウイルス薬はインターフェロンに比べると副作用はかなり少ないですが、治療を中断すると、ウイルスが再び増加して肝炎の悪化を招くことがあるため、長期にわたって治療を続ける必要があります。

ラミブジンは副作用が少ない薬ですが、ラミブジンが効かない耐性ウイルスが出現することがあります。耐性ウイルスは、治療期間が長くなると出現率が増加します。耐性ウイルスが出現しALT値が上昇した場合は、別の治療法(ラミブジン以外の抗ウイルス薬の併用など)が必要になる場合があります。現時点では、この3種類の中では、エンテカビルが最も耐性ウイルスができにくいことがわかっています。そのため、抗ウイルス薬を投与する場合は、エンテカビルが第一選択となります。

B型肝炎治療ガイドラインから見てみると、35歳未満では、なるべく抗ウイルス薬をずっと飲み続ける状況にならないように、インターフェロン治療を基本とします。35歳以上ではHBV-DNAの持続低下を目指して初回治療をエンテカビルとします。またこれまでに、すでにラミブジンを使っていて、もしくはエンテカビルに耐性ウイルスが出た場合は、ラミブジン+アデフォビル併用療法を基本とします。

B型肝炎の治療費用・助成

一般的にB型肝炎の治療はインターフェロンやエンテカビルを用い、いずれも治療費が高額になってきます。インターフェロンは様々な種類がありますが、一般的なインターフェロンαを週に3回打つという治療法で、自己負担額はおよそ月に5万円。エンテカビルで、およそ月に1万円。これら治療等に必要な医療費は医療保険が適用さ れますが、自己負担額が高額になった場合は、高額療養費制度の対象となり、一定の基準額を超える部分が保険から給付されます。

実際に給付を受けられるかどうか、受けられる場合その額はいくらか、どのような申請を行えばよいか等については、加入されている医療保険の保険者(例え ば、政府管掌健康保険であれば社会保険 事務所、組合管掌健康保険であれば健康保険組合、また国民健康保険であれば市町村等)や医療機関の窓口等にお尋ね下さい。

さらに2010年4月からは、B型肝炎に対するインターフェロン治療、エンテカビルなどの抗ウイルス剤による治療に対する医療費助成がより強化されました。これらの治療での自己負担額の上限が月1万円(世帯所得の高い方は2万円)まで軽減されています。
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