NHKが主催する「日本賞」教育番組国際コンクールは、世界で最も伝統のある教育番組のコンクールです。かつては皆さんも良くご存知の「セサミストリート」なども受賞した事があるコンテストです。昨年20世紀最後を飾る日本賞はカナダ国立映像委員会製作の「レンズのむこうの真実」という作品でした。


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レンズのむこうの真実
作品は麻薬中毒患者の生活を追い、その厳しい現実を伝えているのと、中毒患者自身の言葉によって伝えられる麻薬の怖さが印象的です。麻薬をはじめる前の顔、中毒状態の時の顔、現在のインタビューに答えているときの顔、更正施設でのトレーニングの後の希望に満ちた顔、どれもがとても印象的で、麻薬がこんなにも人の人生を変えるものかと一瞬にしてわかるように映像が伝えています。

Clapton live -- on 'Larry King'
エリック・クラプトンというギタリストがいます。
彼はCNNというニュース専門チャンネルのインタビューで自分の生い立ちを話していました。若くして音楽で世界に名を馳せていましたが、その間、アルコールやドラッグに溺れていた事が語られていました。

生後まもなく両親から捨てられた彼は、巡り会った母親から愛情のかけらさえもらえずに成長してきました。結婚後は最愛の息子を事故で亡くし、肉親の愛情に対して本当に辛い思いをしてきた事が音楽と薬物に溺れる原因だったようです。

今では彼自身の薬物依存もすっかり更正したばかりか、私財を投じて建設した麻薬更正施設や麻薬撲滅のための運動について目を輝かせてインタビューに応えています。

大切な事
これら二つのお話は、いずれも人間らしく希望のある人生を送れることがいかにすばらしいか、そのすばらしい人生を、麻薬は一瞬の油断で打ち砕いてしまう事を伝えています。

我々医療関係者は、麻薬の経験がないのはあたりまえですが、勉強を積み重ねるほどに麻薬についての認識が深まり、いけないものという判断が生まれてきます。
そうした「いけないという判断」を専門以外の人たちに伝える事はとても難しい事です。精神的依存や肉体的依存の違いを話したりしても皆さん、ピンとはこないと思います。私自身もそう、禁煙した時の辛い思いぐらいが関の山です。

専門家が考える事をきちんと補足して伝える事で、様々なメディアを通して流れてくる情報を一般の方々が正しい判断で理解してもらえる事につながると思います。そうした機会がもっとあればいいと思いますが、「レンズの向こうの真実」は、もし機会がありましたら、ぜひ一度ご覧になって頂きたいと思います。

薬がファッションとして伝えられている感じがする中で、ファッションでは語る事のできない情報もきちんと知ってもらいたいと思います。

薬物問題は、日本ではまだあまり多く語られる事のない社会問題です。しかし、ファッションとして浸透しつつあるこの問題について、早い段階で取り組み、知らないが為に後戻りできない事になってしまうのを防ぐ事は、我々専門家の使命でもあると思います。

薬物について冷静な判断が出来る人がひとりでも多く増える事を祈って終わりたいと思います。

<関連サイト>
・Eric Clapton Biography(CNN ラリー・キングLIVE )(英語)
・薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイダメ。」のホームページ((財)麻薬・覚醒剤乱用防止センター
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