癌(がん)/がんの手術治療

手術後のお風呂はいつから可能?縫合後の入浴許可条件の目安

【外科医が解説】手術後のお風呂はいつから可能でしょうか? 術後は「清拭のみ」「シャワー浴のみ」「浴槽に浸かっての入浴」と、段階を踏んで通常の入浴に戻していきます。全身の状態や縫合の後の創部の治り具合など、医師として入浴許可を出せる条件の目安を解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

手術後、早くお風呂に入りたい……入浴・シャワーはいつから可能?

手術後のお風呂はいつから可能?

お風呂に肩まで浸かると、清拭やシャワー浴だけでは得られない気持ちよさを感じる方多いようです。手術後、入浴ができるようになる目安は?

最近は、シャワーですませる方も増えているようですが、やっぱり、お風呂に肩までつかることを楽しみにしている方は多いのではないでしょうか?日本に温泉が多いことも関係しているのかもしれませんが、お風呂に肩までつかるとやはりホッとするものです。

手術後も、もうシャワーだけでなく、湯船に入っていいですよ、と患者さんにお伝えする瞬間は、外科医にとっても何となく嬉しいものです。

今回は、普段あまり詳しく語られることのない手術後の入浴許可の流れについてお話します。

<目次>  

手術後の体のケアはシャワーや入浴ではなく、まずは「清拭」

体に負担の大きな手術でなければ、大体、手術室で人工呼吸のために口から気管に入れていた管を抜いて病室に戻ってきます。

消化器系の手術でなければ、その日の夜や、遅くとも翌朝にはお水を少し飲んでみて、問題がなければお食事も再開されます。トイレにも看護師の付き添いで、まずは少しずつ移動してみることになることが多いと思います。

そして一段落つくと、看護師が蒸しタオルをいくつか持ってきます。私自身も経験がありますが、あの熱いタオルで顔を拭くと本当にすっきりして、生き返ったような気持ちになるものです。

場合によっては、看護師が手伝うこともありますが、これを病院では、清拭(せいしき)と呼び、手術後の体のケアの第一歩です。
 

手術後のシャワー浴はいつからか条件と創部や縫合箇所の注意点

手術後の経過が順調であれば、数日後にはシャワーの許可が出ることがあります。

シャワーを浴びられるようになるためには、全身状態がおおむね良好で、発熱がなく、創部の治りも順調で、点滴の針が体から完全になくなっていることが基本的な条件になります。

創部については、抜糸していなくても、最近は防水テープなどがありますので、これらを利用して創部をできるだけ濡らさないようにすれば大丈夫です。

もちろん、長引いている場合や患者さんの状態によっては、いろいろな工夫をしてシャワーを浴びていただくこともあります。また、どうしても難しい場合には、体は清拭を行い、頭は、洗髪台を使って看護師が洗うことが多いです。

いずれにしても、シャワーを浴びると患者さんの表情が一変し、すっきりされるのが印象的です。
 

手術後に入浴許可を出すための条件の目安

湯冷めや湯あたりという言葉がありますが、お風呂に入った後に、体調がおかしくなることは、日常生活でもあるものです。また、体調が悪い時には、入浴時に気分が悪くなってしまうこともあります。

そういった意味では、手術後の入浴許可の大前提は、手術後の経過が良く、血液検査やレントゲンの結果に問題がない、そして、発熱もないということが大前提になります。

そして、もう一つは、創の治り具合。シャワーであれば、縫合した箇所の抜糸前でも防水テープを使って浴びることができますが、入浴で浴槽に入るとなれば、やはり抜糸が済み、上からテープを貼らなくても問題ないというところまで、創部がきれいに治っていることが大切です。時に、創部に感染を起こして創部の治癒が長引くことがありますが、このような時には、やはり入浴許可を出すタイミングは遅くなってしまいます。

以上の2つの条件が満たせるようになれば、医師は、入浴の許可を出します。

入浴許可を出して晴れて久しぶりの入浴を済まされた後、患者さんのもとを訪問すると、肩までお風呂につかって本当に気持ちよかったという話題で盛り上がることも少なくありません。

外科医にとっても、入浴許可が出せると言うことは、それだけ患者さんの状態、術後の経過が良いということです。外科医にとっても、患者さんにとっても、手術後の入浴は、思い入れの深い出来事になります。

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